国内

大口病院連続変死事件 病院関係者の犯行なら公判難航か

病院で起きた事件の行方は

 神奈川県横浜市にある大口病院での連続変死事件の“最初の”犠牲者は9月20日に死亡した八巻信雄さん(88)だった。何者かによって点滴に界面活性剤を混入され、亡くなったのだ。

 終末期患者の多い同病院では“よくある不幸”と思われたのも束の間、その2日前に死亡していた西川惣蔵さん(88)も中毒死だったことが判明する。さらに2人が入院していた4階フロアだけで7月から9月にかけて約50人もの患者が亡くなっていたこともわかった。院内人事に絡み看護師間でトラブルがあったとされるが、事件との関係は不明だ。

 本稿締め切り時点で犯人の逮捕には至っていないが、医療関係者の間には「その先が難問だ」という指摘もある。仮に今回の犯行が病院関係者であった場合、医療施設や老人ホーム内の事件ならではのハードルが発生するからだ。

 1999~2000年に宮城県仙台市で起きた、患者の点滴に筋弛緩剤を混入し殺害した事件では、殺人と殺人未遂の罪に問われた准看護師の無期懲役が確定したのは2008年。准看護師は最後まで無罪を主張し、冤罪の可能性を報じたメディアもあった。確定後も再審申請が行なわれている。

 2014年11~12月にかけて神奈川県川崎市の有料老人ホームで起きた連続転落死事件は、発生から1年以上が経過した2016年2月に容疑者が逮捕。取り調べに対し、当初は介護の仕事に対する不満やストレスを口にしていたが、途中から黙秘に転じた。公判は始まったばかりだが、物証の少なさから難航が予想されている。ベテラン捜査員が語る。

「医療施設や老人ホームでの事件では、被害者の証言能力に限界が出てくるケースが多い。薬物をはじめとした医療の専門知識も立証の障壁になる。容疑者の自供に頼ると、後に証言を翻された時に公判を維持できなくなる」

 医療の専門家も同様の懸念を示す。東京大学医学部特任教授の上昌広氏が言う。

「大口病院で患者への点滴が無造作に放置されていたことが問題視されていますが、終末期患者を抱える、いわゆる老人病院ではよく見られる光景です。

 終末期医療は、医療費抑制を狙った国の医療政策のために保険点数が低く抑えられている。そのため施設側は予算を削るしかなく、管理が行き届かなくなる。監視の目がない中で内部の人間による犯行が起きれば、どうしても物証や証言が乏しくなり、他の殺人事件に比べて立証は非常に難しい」

 白衣の天使の中に紛れて無抵抗の高齢者の命を奪った“悪魔”は今、何を考えているのか──。

※週刊ポスト2016年10月14・21日号

関連記事

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン