そもそも百貨店ビジネスは、自ら「構造的欠陥」を改めない限り、業態の生き残りは難しい。
「従来型の百貨店は厳密には『小売業』とは呼べず、単なる『場所貸し業』なんです。入居している店からテナント料として売り上げの数十パーセントを徴収する“歩率商売”が基本なので、各々の商品の在庫リスクも抱える必要がありません。
しかし、それでは大幅に利益率を上げることはできませんし、だからといって売り上げの低い店のマージン比率を上げれば、例えば食料品なら内容量を極端に減らしたり、値上げに転嫁せざるを得なくなったりして、ますます顧客離れを招く。そうした百貨店の仕組み自体を早急に変える必要があるのです」(鈴木氏)
もちろん、百貨店もこうした事態に手をこまねいてばかりいるわけではない。例えば、三越伊勢丹では婦人靴を皮切りに、顧客ニーズや売り場のコンセプトに合わせたPB(自主企画)商品を開発し、有力メーカーが製造を請け負うSPA(製造小売り)に力を入れている。ユニクロやニトリなどが実践して高い利益率を誇っている手法だ。
「同じテナント群や同質化が否めない百貨店において、三越伊勢丹は他とは違う独自のコンセプトや品揃えを持つユニット(売り場)を育てています。
そして、顧客の支持が得られれば、個別のユニットを取り出して、都心部や駅ナカの商業施設などに小型店としてサテライト的に出店する。羽田空港内にある『ISETAN HANEDA STORE』が代表例で、この流れは成功しつつあります」(鈴木氏)
だが、課題もある。SPAはまとまった数量の生産や売り上げボリュームが見込めなければ手を広げられないうえ、価格も抑えられない。
「富裕層の顧客を大事にしつつも、今後は年収600万円程度の中所得者層でも買いやすく、かつ付加価値の高いオリジナリティ溢れる商品をどれだけ揃えられるかに、百貨店の命運がかかっているといっても過言ではないでしょう」(鈴木氏)
高級ブランドばかりが軒を連ねる金持ち御用達の大型店──こんなイメージを払拭させられなければ、百貨店の淘汰はさらに進んでしまうだろう。