近ごろ、大手コンビニチェーンに立ち寄ると、レジ前にて近隣の個人農家が栽培した新鮮な野菜や果物、あるいは地元の特産品などを販売している店舗が増えたことに気付くはず。ある観光地では、地元在住のデザイナーが制作したオリジナルTシャツを売っている店まである。
コンビニではいま、より地域性を重視した店づくりが進んでいる。『コンビニエンスストア速報』編集長の清水俊照氏が解説する。
「コンビニといえば、同じチェーンなら『金太郎飴』のように、どの店をとっても同じ商品、同じ価格、同じサービスを提供しているイメージがありますが、消費者の嗜好も多様化する中で、もう20年ほど前から“地域密着型”の取り組みを始めていました。
例えば、おでんのつゆを地域ごとに好まれるだしに変えたり、関東では豚肉を使う『肉じゃが』を、関西では牛肉にして売っていたりするのは有名な話。牛肉文化の関西では、弁当の具材である牛カルビも関東より肉厚にしないと売れないといいます。
こうして原材料だけでなく、調理法にまで踏み込んだきめ細かい地域商品の開発が欠かせない時代となっているのです」
地域密着型コンビニが増えている背景には、大手チェーンの寡占化が鮮明になったことも大いに関係しているだろう。
長らく「コンビニ5万店飽和説」が指摘されてきたが、国内の主要コンビニチェーンは2012年10月に早くも5万店を超え、今年9月末時点では5万7284店にまで拡大し続けている。
しかも、驚くべきことに、そのうちの9割近くが「セブンイレブン(1万9045店)」、「ファミリーマートグループ(1万8236店)」、「ローソングループ(1万2648店)」と上位3強チェーンで占められている(※)。
※店舗数は『コンビニエンスストア速報』調べ。ファミリーマートグループには「サークルKサンクス」「ココストア」「エブリワン」が含まれる。ローソングループには「ナチュラルローソン」「ストア100」と一部の「ポプラ」「スリーエフ」が含まれる。4位以下は「ミニストップ(2239店)」「デイリーヤマザキ(1554店)」「セイコーマート(1181店)」と続く。