日本では人体冷凍保存(クライオニクス)は行われていないが、「社団法人・日本トランスライフ協会」が、遺体搬送を事業化している。同協会は、理事のひとりがクリオロス社への遺体搬送を手がけたことを契機に設立された。代表理事が語る。
「すでにアルコーやクリオロスに手続きしている方を対象にして、私たちはドライアイスで遺体をマイナス80℃に保ちながら空輸することなどを担っています。血液の入れ替えなどはしません。対応するのは全身保存のみです」
日本からの搬送費用は、亡くなった状況や地域・空輸代金にもよるが、最低でも200万円はかかるという。
日本人でサービスを利用したのが確認できているのは同協会理事がクリオロス社に搬送した女性と、アルコーで保存されている釧路出身の在米女性の2人だ。
現代の技術では不可能でも、アルコーでは、将来、分子レベルのナノテクロボットが壊れた細胞を修復する技術が確立されれば、蘇生は可能だと主張している。
早稲田大学教授で生物学者の池田清彦氏が人体冷凍保存技術について指摘する。
「金魚やカエルなどは瞬時に凍らせたあと、常温の水に戻すとまた動き始めることがあります。人間は体が大きすぎるから、冷凍に時間がかかり氷の結晶で細胞が破壊されてしまう。だから、全身を一瞬で冷凍する技術ができれば蘇生が可能になるかもしれない。
生体での復活にこだわらず、記憶のメカニズムを解明し、記憶や意識をデータ化してコンピュータで再現するほうが有望かもしれません」
まだ冷凍保存から蘇生した人間はひとりもいない。最初の蘇生者が現れるのは何年後になるだろうか。
※SAPIO2017年2月号