「男性保育士はダメ」論争を危惧する専門家も(写真/アフロ)
男性保育士が働きやすい環境をつくるとして千葉市が4月から実施する『男性保育士活躍推進プラン』を巡り、激しい議論が起きている。男性の保育士が女児の着替えを手伝うことを嫌がる保護者がいるのだという。千葉市幼保運営課の古川真一さんは「賛否両論ご意見をいただいています」と明かす。
「実際意見をいただいたかたの半数が賛同してくださっています。反対の意見としては、『女児のおむつ交換は女性保育士にやってほしい』『女の子の羞恥心を守るため』『犯罪が心配だからやるべきでない』との声が寄せられています」
保育士歴11年の松本圭さん(仮名、32才)は、最初ニュースを見たとき、「失礼だ」と怒りがこみあげてきた。
「ごく一部の犯罪者と同じ目線で見られるのは不快。犯罪を犯すのは“男性だから”ではないんですから」
保育園で過去に起きた事件を見ても、女性保育士がかかわったものが少なくないのだから、松本さんの怒りももっともだ。一般社団法人子ども安全計画研究所代表理事でジャーナリストの猪熊弘子さんが言う。
「日本は保育の現場に限らず、危ない人を排除する仕組みがありません。それが必ずしもいいというわけではありませんが、海外では労働者の前科を調べるのに日本にはない。海外の人には『どれだけ日本って性善説なの』と言われています。そういうことも含めて考えていく必要がありますよね」
かつて女性には、女性に生まれたというだけで差別とともに生きなければいけない時代があった。それが今や、男性であることを理由にした“異議申し立て”で、こんな大きな議論を巻き起こしている。
そんな事態を危惧するのが産婦人科医の宋美玄さんだ。
「『この世には異性愛者しかいない』とか、『性別は男と女しかない』という固定観念で社会や制度について語るのは古いということを前提に議論してほしいと思います。
保育については『どうしても男性は嫌だ』という保護者がいれば、女性保育士しかいない保育園を選べばよい話で、保育園不足で選ぶほどの余裕がなければその希望は引っ込めるしかない。ただでさえ保育園も保育士の数も足りていないなか、そんな希望が聞き届けられると思っているとすれば、それはモンスターじゃないですか。
医師にしても保育士にしても、なかには性犯罪を起こす人が稀にいるかもしれませんが、それは異性間で起こるとは限らない。そんなことを言い始めていくと、より良い保育も医療も受けられなくなってしまうと思います」
何が子供の最善か--それは保育士が男だから、女だから、で語ることではない。母として自分でひとつひとつ見極めていかなければいけない。
※女性セブン2017年2月23日号