◆唐突にお金に関わる頼み事をするメッセージは疑う
LINEやFacebookでの友だちにはリアルでも親しい人が少なくないせいか、メッセージ内容を疑わない傾向がある。乗っ取りアカウントは、その安心した気持ちにつけ込む。そしてiTunesカードやAmazonギフトカードなど、プリペイド電子マネー購入を頼んでくる。
「アカウントを乗っ取られたあと、叔母がなりすましから誘導されて、コンビニでiTunesカードを3万円も買って画像送っていました。実家の母から連絡をもらって知ったのですが、もう取り返しがつかない。一応、警察に届けましたけれど、戻ってこないでしょうね。コンビニの店員も、明らかになれていない人が3万円もカードを買ったら、おかしいと思って声をかけてくれればいいのに。犯人、捕まらないんだろうな」(40代・団体職員男性)
特殊詐欺の世界では電子マネー型が人気で、警察庁のまとめによれば、2016年の被害を犯人が受け取る形態別にみると、手渡し型、宅配便などの送付型、振り込め型が減少しているのに対し、電子マネー型(約8億円)は前年比で33%増加している。電子マネーは特殊詐欺の世界でのトレンドとなっているようだ。
「電子マネーは世界のどこでも簡単に換金できます。日本人相手のSNS乗っ取り詐欺の多くは、台湾や中国などで組織的に行われています。そのため、メッセージには不自然な日本語が目立ちました。ところが、最近は自動翻訳の能力が高くなったので、注意深く読まないとわからないくらい自然になってきました。この特殊詐欺については、警察からも警告が出るようになりましたが、一件の金額が少額で国境を越えた犯罪のため、逮捕や賠償にはつながりづらい。お金に関するメッセージが届いたら、その友だちとメッセンジャー以外の手段で連絡を取り、自衛するしかありません」(振り込め詐欺グループに詳しいジャーナリスト)
今やSNSは年代に関わりなく多くの人が利用するメディアとなった。Facebookは32.5%、50代が18.7%、60代でも9.3%が利用し、LINEは全体で60.6%、50代で42.8%、60代でも15.0%にのぼる(総務省調べ)。利用者の増加とともに増える被害を防ごうと、SNSの運営側もアカウント乗っ取りについては注意喚起しているが、その多くはネット上での告知にとどまっている。そのため、ふだんからネットで情報を得る習慣があまりない世代のひとには届きづらい。詐欺師たちとのいたちごっこは、まだしばらく続きそうだ。