「この世のあらゆる書物も、お前に幸福をもたらしはしない。だが、書物はひそかにお前自身の中にお前を立ち帰らせる」
作家ヘルマン・ヘッセの格言は、彼らにこそ相応しい。刑務所や拘置所にいる囚人たちには、意外なほど読書家が多いのだ。いったい彼らはどんな本を読み、本から何を得ているのか。
君野康弘被告(50)は2014年9月、神戸市長田区の路地で、小学1年生の女児(当時6歳)に「絵のモデルになってほしい」と声をかけ自宅に誘い入れたのち、首を絞めるなどして殺害。その後遺体をバラバラにし複数のゴミ袋に分け遺棄したとして、わいせつ目的誘拐、殺人などの罪に問われている。
「申し訳ない。かわいそうなことをしてしまったと思います」と語った君野被告の愛読書は、『ありがとう。バディ』(吉田太郎著、セブン&アイ出版)という本だった。
「小学校の教室で生徒と一緒に犬が生活する話で、2人の生徒が学校になじめなくて休みがちなのを、バディの世話をしてみないかと言われて目を輝かせてやってみます、手伝います、という話です。自分も犬を飼ってたことがあるから……名前はコロ。半年くらい飼ってたけど犬を飼えないところに引っ越しすることになり、友人にあげたんです」(君野被告)
立教女学院小学校の試み“動物介在教育”についてのノンフィクションである本作は、女子小学生と犬との心の触れ合いが描かれている。