大阪市に今年2月に開業した「アリス薬局」は、市販薬に加えて100種類ほどの医療用医薬品も扱っている。薬を販売する際に時間をかけて利用者の病状などを聞き取り、薬の販売だけでなく体質改善指導などを行なうことで顧客増につなげているが、開業当時は苦労の連続だったという。
「オープン直前に『処方箋なしで病院の薬が買える薬局』という看板を出したところ、保健所の職員に『この看板は下ろしなさい』『こういう販売はしないと念書を書きなさい』と指摘を受けました。
そのあとも5月までに9回、保健所の職員が店に来ました。『こういう業態は倫理的におかしい』といったことをいわれて、法律に違反しているわけではないと説明しても、なかなかわかってもらえなかった。店を潰すわけにはいかないので、お客さんが来た時の応対を見てもらったりもしました。今ではきちんとこの業態を評価してもらえていると思う」(アリス薬局・代表の石井結衣氏)
どの店舗も行政側とのやり取りに苦労したと証言する。昨年8月に薬局「池袋セルフメディケーション」をオープンした長澤育弘代表はこうもいう。
「保健所との調整にも苦労しましたし、一番大変だったのは卸業者を見つけることでした。卸業者さんにとって病院や医師は大口の取引先です。大手は軒並みダメで、僕が普通の薬局に勤めていたときのツテなどをたどって、やっとお付き合いしていただけるようになったんです」
ここで浮かび上がってくるのは、行政や病院といった既存の医療をかたちづくる者たちが、新しい業態の薬局を歓迎していないという構図だ。