「保険金の支払いについて公表するのは守秘義務に反する。例えば自動車保険の加入者が複数回事故を起こしたからといって、保険会社が『この人は要注意です』と名前を公表しますか? 医師には再発防止のために注意をしています」(医賠責対策課)
一般ドライバーを対象にした自動車保険と、患者の命を預かる医師の保険を同列で比較するのは無理がある。しかも、ドライバーは重大事故を繰り返せば免許停止処分になるが、リピーター医師は“注意”を受けるだけ。
自動車保険は事故を起こすと支払う保険料が上がるが、賠償保険は保険請求を繰り返しても支払う保険料の増額はないという。ペナルティもなく、経済的な痛みも受けないとなれば、事故やミスの“再発防止”は難しい。貞友氏が指摘する。
「日本ではいったん医師になればその後の研修制度や免許更新制度がないため、一生医師であり続けられる。一方、米国では医師免許の更新制度があるうえ、科によっては医療事故を3回起こせば賠償保険の年間掛け金が年収を超えてしまい、事実上医師を続けることが不可能になるため“スリーストライクアウト”と呼ばれている。また、欧米では執刀医が“これまで何度失敗したか”という質問に答えるのは当然のことですが、日本ではそうなっていない」
医師は手厚く守られているが、患者はリピーター医師に診られる恐怖に怯えなければいけない。