「1970年代頃までは、学校内に給食室をもっていて、調理員が作る方式が主流でした。しかし非効率的とされ、1985年以降は、いくつかの学校給食をまとめてまかなえる給食センターで、一括して調理することが進められました。さらに近年、民営化が進み、民間のデリバリー業者が請け負うことが増えました。民間業者の中にはコスト競争に負けないために人手を減らし、その結果、衛生管理さえままならない状況に陥ってしまったところもあります」(鳫教授)
大磯町の給食も民間のデリバリー業者に依頼している。急速な民営化が進む背景には子供の貧困問題も見えてくる。『すごい弁当力!』の著書がある食育研究家で作家の佐藤剛史さんが言う。
「給食費が高い、払えないという一部の声を受け、行政や学校側は“より安い”民間業者に給食を依頼しようとする。当然、低コストで運営している業者は材料費や人件費を抑えようとするため、質の低い給食となってしまうケースが少なくない。だが、経済的貧困層の家庭の子供は給食のない土日に栄養摂取率が下がるというデータもあります。その意味では給食が唯一の栄養源である子供が存在する以上、一概に給食費を上げて給食の質を上げるわけにはいかないのが現実なのです」
貧困家庭とともに、働く母親が増加したことも、給食に頼らざるをえない一因となっている。厚労省の国民生活基礎調査によると、ワーキングマザーの数はここ10年で10%以上急増。68.9%の母親が働いている。中学生の息子を持つ、パート勤めの母親は、こんな苦悩を打ち明ける。
「給食があって助かるというのが本音。だけどもし大磯町の学校みたいに『お弁当』となったら、反対なんてとても言えない。『子供のことを考えてない』って批判されると思うし…。しかも、お弁当は家庭の事情が見えてしまうから、かなり気を使います。『昨日と同じおかずだと子供が恥ずかしいかな』とか。お弁当の話って結構ナーバスなんです…」
※女性セブン2017年10月19日号