『アサヒカメラ』(2018年2月号)連載「写真好きの法律&マナー」では撮り鉄に特化して取り上げている


 線路沿いから撮る場合は、鉄道用地や私有地に踏み入らないことは大前提だが、通りがかった近隣住民にきちんとあいさつする、なども大事だ。ホームで撮影する際はフェンスや柵から身を乗り出さない、三脚や脚立を使わない、駅員や乗客などを不要に撮影して不快な思いをさせない、といったことに気をつけたい。また、列車を撮影する際も運転士の視界を遮るストロボ撮影は禁止。

 一見すると、撮影マナーとして最低限のようなことばかりだが、これらが守られていないのだ。

「鉄道撮影だけに限らず、風景写真や野生動物といった分野でも同じようなマナー問題を耳にします。風景写真・野生動物の分野でも、いい写真を撮ろうとして自然を破壊してしまったり、餌づけをして生態系を狂わせるようなマナーの悪いカメラマンはどの分野でもいるのです。だから、カメラ撮影とマナー問題は避けて通れない話です」(同)

 しかし、自然や野生動物のカメラマンと撮り鉄とでは、世間からのイメージは大きく異なる。今般、一般世間から白眼視されることが多いのは撮り鉄ばかりだ。その差は、何だろうか? 佐々木編集長は、こう分析する。

「自然・風景や野生動物は人里離れた山奥などが撮影地になるので、世間の目は届きにくくなります。一方、鉄道撮影は都市。つまり、人が生活している場が主な撮影地です。だから、撮り鉄は世間から目立ちます。そうしたことから、撮り鉄には非難が集まりやすいと言えます」

 もちろん、マナーを守っている撮り鉄は多い。そうしたマナーを守る撮り鉄でも、撮影に夢中になっているうちに線路内や私有地に入り込んでしまうことがある。期せずして、他人に迷惑をかけることはあるだろう。

 そうした知らず知らずのうちにマナー違反をしてしまったカメラマンに対して、佐々木編集長は「少しずつでいいから、マナーアップしていこう」と呼び掛ける。

 また、撮り鉄は同じ場所に群衆で現れる。鉄道写真の有名撮影地で絶好のポジションは、”お立ち台”と呼ばれる。誰もが美しい鉄道写真をモノにできるので、撮り鉄はどうしてもお立ち台に殺到しがちだ。そのお立ち台を巡る争奪戦では、撮り鉄同士の罵り合いも繰り広げられる。撮影場所をめぐる子供じみた争いは、撮り鉄のイメージをさらに低下させる。

 そうした撮り鉄に対して、佐々木編集長は、こんなアドバイスを送る。

「鉄道に限らない話ですが、みんなと同じ被写体・構図の写真は紋切り型になります。面白味に欠けるので、コンテストで選ばれることはありません。だから、人と同じような写真が撮れるお立ち台に殺到するのではなく、自分が心から撮りたいと思うような、オリジナルの鉄道風景を撮ることを心掛けてほしい」

「いい写真を撮りたい。だから、他人よりいい場所を確保したい」といった撮り鉄の気持ちは理解できる。みんなが殺到する人気撮影地で、自分も撮りたいという群集心理もわからなくはない。だが、周囲に迷惑をかける傍若無人な行為は許されない。

 撮り鉄とマナーの問題は、簡単には解決しない。撮り鉄と鉄道事業者・沿線住民・利用者は共存するためには、なによりも撮り鉄たちがマナーアップし、撮り鉄のイメージを回復させることだ。それは、つまるところ撮り鉄たちの心がけにかかっている.

関連記事

トピックス

岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン