最後はカーリング選手のモチベーションだ。
代表への道は、現在、日本選手権が選考の役割を果たしている。トライアルを開催することもあるが、それも日本選手権の成績に基づいたチームが参加する。地区予選を勝てば日本選手権へ。そこで勝てば世界へ。という道筋は分かりやすく、またすべてのチームに五輪への糸は、細いかもしれないが平等に存在している。
選考方法をどうするかにもよるが、例えば、10選手を代表候補に挙げて「次の4年間、五輪目指してこのメンバーで頑張りましょう」という方向性を示す。すると、日本のカーリング人口は3000人前後だが、その場合、その10人以外の多くのカーラーが競技をやめてしまう可能性がある。
これも他の競技で喩えると、「地区予選で勝っても、甲子園は県選抜で行きます」と通達するのと同じことだ。高校球児はどんな弱小校でも甲子園を大目標に掲げて白球を追っている部分があるだろう。
そうなると日本選手権は選抜候補選手を選ぶ場になってしまい、カーリングにおけるもっとも大切な部分の一つであるチームプレーは置き去りにされ、個人のショット率を上げることに腐心する選手が続出するのは目に見えている。
さらに、2番目の予算の話とも関係するが、五輪の道が途切れた時、これまで支援していた企業はどうするか。考えると背筋が寒くなる。
選抜制導入論は、やはり五輪や世界選手権で結果が出ない時に論じられてきた経緯がある。ソチ五輪以降は世界で結果が出始めているので下火になってはいるが、ソチ前にはJOCから正式に提案された経緯もある。
あるトップ選手は「別にトライするのはいいけれど、そんな急にやったってうまくいくわけない」との意見を、カメラやマイクのないところで話してくれた。
監督、資金、モチベーション。それらの理由が複雑に絡みあって一筋縄ではいかない話だから、今回の五輪でカーリングが脚光を浴び、長期的な支援をする企業が増え、協会の組織力もアップ──すべての話はそれからなのかもしれない。いずれにしても、一朝一夕でトライするような安易な話ではないことは確かだ。