ケンタッキーフライドチキンが3月27日より店舗限定(247店/予約制)で「オリジナルチキン」の45分間食べ放題(税込み1380円)を実施する。この試みは今回が初めてではないが、ピース売りの販売が特徴のチキンを食べ放題にする狙いはどこにあるのか。そして、変わりゆく飲食業界の“食べ放題事情”について、フードアナリストの重盛高雄氏がレポートする。
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ケンタッキーが久しぶりに「食べ放題」を店舗限定で実施する。店舗だけでなく曜日も毎週火曜日のディナータイムと限定されているので、ネット上では〈早い者勝ちか?〉などと話題になっている。
ルールは次の通りだ。1380円を支払って最初に提供されるのはオリジナルチキン3個、カーネリングポテト1個、ビスケット1個、ソフトドリンクMサイズ1杯。これらを店内で食べ終わった後に、45分以内なら追加注文が自由にできるというもの。
確かにケンタッキーの食べ放題には、話題性を狙っての側面が大きいのではという印象を受ける。
そもそもケンタッキーのチキンは国産にこだわり、店内調理にこだわり、安全安心にこだわり支持され続けてきた。同社の決算から推測できる原価率は、売上高と売上原価の金額から試算して約57%と、他のファーストフードよりも高いため、同一料金で食べ放題にするメリットは少ないだろう。
もちろん顧客満足の観点からみれば効果はある。コンビニチキン等に比べても値段が高く、ケンタッキーはクリスマスなど特別な日にしか食べない消費者にとっては、元が取れるか取れないかは別にしても、食べ放題で好きなチキンの部位をお腹いっぱいかぶりつける満足感や幸福感はあるはずだ。
一方、量を求めるのでなければ、別段食べ放題企画に参加する必要性はない。通常の割引クーポンなどを活用して自分の食べられる量だけ購入すれば事足りる。もっとも、ケンタッキーは店内で食べるよりも、持ち帰りで購入して自宅で食べる消費者が圧倒的に多い。あの食欲を掻き立てる独特なタレの匂いや、ボックスを開けるときのワクワク感も持ち帰りの楽しみ方のひとつだ。
また、すでにケンタッキーフライドチキンは多くの消費者に支持され、商品としての価値や知名度が確立している。いまさら食べ放題があるからケンタッキーに初めて行くという人も少ないだろう。
だとしたら、なぜ敢えて食べ放題にするのか──。どちらかといえば「ハレ」の食の選択肢のひとつで、毎日選ばれる可能性を持つ食でないからこそ、より多くの消費者に足を運んでもらいたい。つまり、食べ放題は日常的な需要喚起策の一環というわけだ。
しかし、価格を下げての需要喚起は、せっかく築いた価値を下げることにつながる恐れもある。いまや食べ放題というシステム自体が、前時代の集客ツールとなっている感があるからだ。