では、「匂いを嗅いだかどうか」や「いやらしい目で見たかどうか」が裁判の争点になった場合、お互いにどう立証することになるのか。銀座ウィザード法律事務所の代表、小野智彦・弁護士が言う。
「女性側は『匂いを嗅がれた』という主張だけで戦えるでしょうが、男性側は『嗅いでいない』ということを立証しなければならず、至難の業だと思います。
かつて、『触れた』容疑をかけられ勾留された人の無罪を証明するために、実際に事件のあったJR埼京線の車両に乗り、証言をもとに2人の立っていた位置の距離をメジャーで測り、手が届くかどうかを検証しました。しかし、触ってもいない痴漢容疑の場合、こうした検証による反論もできません」
迷惑防止条例違反で有罪判決を受ければ「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処せられる。勾留されて無断欠勤などになれば会社に知られてしまうし、家庭が崩壊する可能性もある。
巻き込まれないための対策はあるか。数多くの痴漢容疑者の弁護を担当してきた弁護士の甲本晃啓氏が言う。
「電車内で女性のすぐ近くに立たないというのが、唯一の防衛策と考えられますが、満員電車では難しいでしょう。女性が近づいてきたら背中を向けて目をつむり、次の駅で降りて乗り換えるなどしか、策は考えつきません」
もはや“男性専用車両”の登場が冗談抜きで待たれる時代になった。
※週刊ポスト2018年4月13日号