そんなルールなものだから、一見盛り上がっている飲み会でも緊張感がある。常に牽制し合うサスペンスドラマのような展開。また、そんなやりとりが繰り広げられる家が生活感に溢れている。シェアハウスはシェアハウスでも、業者によって常時整頓された『テラスハウス』とは異なる家。『THE HOUSE』のリビングには、ニトリで売っているような机。出演者自ら掃除をしていることをうかがわせる、少しホコリが気になるラグ。そして、窓際には虫除けスプレーが置かれる。
目に入るものひとつひとつに、生活臭が漂う。ホームムービーのような画質の悪いカメラは、生々しさをより過剰に映す。出演者も肉感的だ。そして、リアリティに満ちた暮らしを見せる彼らは、何よりもサービス精神が旺盛である(ここに好感が持てる)。
ただの共同生活を続けても意味がない、コトを起こさないと面白くない。それを誰よりも自覚している。何も行動を起こさないメンバーを次々と追放、もう粛清に近いほどに。『THE HOUSE』では、恋愛はしなくてもよいというルールであるにも関わらず、妙な同調圧力がそれを許さない。ヤラセまでとは言わないが、『THE HOUSE』での生活を自らかき回す。
メンバーが8人もいればグループも形成され、内ゲバも起こるのは必然か。そんなことになれば、美人は色仕掛けをし、相手チームの男を泣き落とす。ワンシークエンスが異常に長いため、泣く女と慰める男のやりとりを5分以上見ることになる。
TOKYO MX1で週1ペースで放送されていた時は、良かったのだろう。しかし、Netflixで一気見すると濃度の高いゲスさは厄介、心にくる。けど、やっぱり面白いからついつい見てしまう。
サービス精神の旺盛さは、司会のダレノガレ明美も負けていない。メンバー自己紹介が始まる前から、見た目だけで性悪女やモテ男を断言し、人間関係を混乱させるのは誰かを予想する。徹底的にゲスな予想を続け、「いい子はつまんないから残らなくていいよ」と言い切る彼女の不敵な微笑みは、まるでディズニー版『眠れる森の美女』のラスボス、マレフィセントだ。ただし、アンジェリーナ・ジョリーが演じたような、実はオーロラ姫を暖かく見守っていた、なんていう慈悲は見せない。スピードワゴン小沢に「ゲスノガレ先生!」と呼ばれるにふさわしい活躍を見せる。
ゲスノガレ先生のコメントは、見ていて辛いものがあった。あまりにも辛辣で「世の中の男女ってこんななの?」と驚く。しかし、番組内でゲスノガレ先生のコメントが女性視聴者から高い支持を集めていることが伝えられる。そのことを担当編集に話すと「みんなとは言いませんが、体育会系の女子はあんな感じですよ。私の友達にも3~4名います」と返答。モテない男は、女の本音ダレノガレショックを体感するも良いだろう。
『THE HOUSE』は性根の悪さを映す。いや、ゲスノガレ先生曰く、これが現実なのか……。良い意味でも悪い意味でも心を染める番組である。毒が回った身としては、続編があれば絶対に見たい。しかし、ゲスさが原因なのか、シーズン3は未だに発表されず。せっかく、Netflixで配信しているのだから『テラスハウス』のごとく復活して欲しいものだが……。