前出の日本法医学会の青木理事長は、こう話す。

「承諾解剖は行政上の必要があって行なうもので、公衆衛生上も、死者の生命の尊重という点でも必要なものです。しかし、明確なルールがないため、遺族への説明が不足していたり、自治体によって負担の差があるなどの問題は早期に改善すべきです。神奈川県の現状は、日本の死因究明制度の未熟さを表わしていると思います」

 冒頭の遺族はこう語った。

「本当に必要な解剖だったのか疑問なのです。何のための、誰のための解剖だったのか……」

 死因究明における制度のルールづくりや、地域差の解消など、課題は多い。少なくとも遺族が十分に納得していないような状態の中で、亡骸が傷つけられることはあってはならないだろう。

文■山田敏弘(国際ジャーナリスト)

※週刊ポスト2018年5月18日号

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