ビジネス

マツダはなぜ不人気カテゴリーの「セダン」にこだわるのか

 1970年代までは、トヨタ自動車でいえば「カローラ」や「コロナ」、「クラウン」、日産自動車でいえば「サニー」や「ブルーバード」「セドリック/グロリア」、ホンダなら「アコード」などのセダンが主流だった。

 それが1980年代に入るとトヨタの「ソアラ」や「セリカ」などの2ドアクーペが人気化し、ホンダの「プレリュード」がクーペブームを牽引、日産も「シルビア」で巻き返した。この間、マツダにも「C2」という呼称の「カペラ」のクーペがあったのだが、ライバル車に比べてエクステリアが地味で埋没し、商業的には成功しなかった。

 当時、まだ20代だった筆者も「C2」に試乗し、確かに「プレリュード」や「セリカ」に比べてエクステリアに華はなかったが、剛性感の高さに感心させられた。

 ドアを閉める際、「バシャ」ではなく「ドン」という感じで、パワーステアリングやアクセル、クラッチペダルも軽過ぎず、ほどよい重さがあった。そういった点が、ライバル車に比べて上回っていた印象を、素人ながらよく覚えている。実際、当時からマツダのクルマは欧州、特にメルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲンを生んだドイツで評価が高い日本車という定評があったものだ。

 その後、1980年代末のバブル期ピーク時はトヨタの「セルシオ」、日産の「シーマ」など、3ナンバーの高級セダンがよく売れた。他社でいえば、ホンダの「レジェンド」といったところだ。ところが1990年代に入るとバブル崩壊の影響もあって当然、高級セダンの売れ行きは失速し、1980年代にブームになった2ドアクーペタイプのクルマも、潮が引くように人気が去っていった。

 代わって売れ筋を牽引したのが、ホンダがヒットを飛ばした「オデッセイ」や「ステップワゴン」といったミニバンのジャンル。並行して、SUBARU(当時は富士重工業)が1989年から投入した「レガシィツーリングワゴン」は多くの“スバリスト”を生んでいったが、群雄割拠のミニバンと違ってワゴンは「レガシィ」の一人勝ち状態だった。

 そこにトヨタの「RAV4」やホンダの「CR-V」といったSUVや、トヨタの「アルテッツァ」、SUBARUの「レガシィB4」といったスポーツセダンなども一時的に人気化している。

 2000年代に入ると初頭にホンダの「フィット」が売れまくり、各社同じコンパクトカーでしのぎを削る時代に。だが、2008年にリーマンショックが起こると維持費の安さや性能向上も相まって、軽自動車が人気に。そしてここ数年は、世界的にSUVが売れ筋になっている。まだSUVブームが入り口だった2012年当時、日産で常務執行役員CCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)を務めていた中村史郎氏(現在は退任)にインタビューした際、こう語っていたことがある。

「SUVは、一言で言えばデザインの自由度がものすごく高いのでユニークなクルマを作れる可能性が、もともと高いんです。セダンやハッチバック、ミニバンなどはどうしても形が限られてくるのに対し、クロスオーバーSUVのジャンルはデザインの幅が広くなる。

 クルマのボディがリフトアップされているので視界が良くて運転しやすいし、スポーティでどこにも出かけられる雰囲気があるでしょう。タイヤも大径タイヤなのでカッコいいですから」

 マツダでも、SUVの「CX-3」や「CX-5」、さらに最近は3列シートの「CX-8」がヒットしている。一方で、世界的にも根強いファンを持つ2シーターのライトウエイトスポーツでは、1989年に初代が登場し、2015年にお目見えした4代目を数える「ロードスター」は、他社が同市場の退潮で撤退していった中でも継続してモデルチェンジし、発売してきた。現行の4代目は、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーも獲得している。

関連記事

トピックス

岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン