いうまでもなく、英語のPARKがその由来であろう。意味は「公園」、あるいは「駐車場」。この現状に、私はひとりの日本人としてかねがね恥ずかしいと感じていた。
有名なジョークがあるではないか。タイタニック号が沈みかけた時に、救命ボートに乗れる人数には制限がある。船員は、壮年の男性たちを説得する。
・アメリカ人には「席を譲ることで、あなたはヒーローになります」
・イギリス人には「弱きものに席を譲ることは紳士のたしなみでしょう」
・ドイツ人には「壮年の男性には席を譲っていただくのがルールです」
・日本人には「他の方はみな席を譲っていただいています」
「他の人に倣う」という日本人の行動様式を如実に表しているのが、大手財閥系不動産会社が展開するマンションブランドではないだろうか。
・三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス」
・三井不動産レジデンシャル「パークホームズ」
・住友不動産は、主力ではないが「パークスクエア」
この他にも三井と三菱に関しては「パーク」を冠したブランドがいくつもある。なぜ「パーク」なのかはよく分からない。多分「○社さんがそういう名前だから」ということで社内稟議が通りやすかったのだろう。もしそうだとすれば、何とも情けない話ではないか。
私が知る限り、海外におけるコンドミニアム(マンション)において、PARKを冠した名称を見たことはない。実際にはあるのだろうが、私の目にとまらないくらい程度に少ないのではないかと推察する。
先日、この話題とは関係なく2人のイギリス紳士に取材する機会があった。おふたりともかなりの教養人とお見受けした。あの国の最高峰の大学で修士以上の学位をお持ちだと仄聞した上での取材であった。
そこで、私は聞いてみた。以下、○○で示したところは、実名を出した。
「日本には、ザ・パークハウス○○(地名)、タワーズ○○○○、〇〇レジデンス(エスペラント語で「冠」)といった名称のマンションがあるが、英語人としてはどう受け取られるのか? 私はそもそもハウス、タワー、レジデンスという3つの“住みか”を表す単語が混在することを奇異に感じているが」
そういう問いかけをしたところ、おひとりは首をひねってこう仰った。「コンピュータが故障してはじき出した言葉ではないのか」。もうおひとりは「何が言いたのかまったくわからないし、どういう住宅なのか想像もつかない。クレイジーだね」と。
私は日本人として、また不動産業界に身を置く者として恥ずかしかった。日本ではこういう馬鹿馬鹿しい名称のマンションが、この業界を代表する分譲住宅として販売され、今でも存在しているのだ。
そこの住人は、自分のマンション名を書類に記したり誰かに告げたりするときに、常に恥ずかしい思いをしなければならない。そういうバツの悪さに対する責任はすべて、そのマンションの名称を決めたデベロッパーに帰せられるのである。