国内

橘玲×中川淳一郎 保守とリベラルの不毛なレッテル貼り

今の日本で保守とリベラルの対立はどうなっているのか(AFP=時事)

 いま日本の「保守」と「リベラル」はどのような状況に置かれているのか。『言ってはいけない』(新潮新書)、『朝日ぎらい』(朝日新書)などの著書がある作家・橘玲氏と、『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)などの著書があるネットニュース編集者の中川淳一郎氏が語り合った。(短期集中連載・第1回)

 * * *
中川:従来、橘さんはリベラル的スタンスを明確にしていましたが、『朝日ぎらい』というタイトルの本を出しただけで、反・朝日新聞派のネトウヨっぽい人から拍手喝采状態になりました。ただ、同書に「なぜ朝日新聞が嫌われるのか」について言及している部分はそれ程多くはなく、基本的には思想がなぜ分かれ、どう分断が発生していくのか、といったことに言及した本という認識をしています。

橘:「朝日新聞はなぜこんなに嫌われるのか?」という疑問が最初にあって『朝日ぎらい』というタイトルをつけたわけですが、おっしゃるように、「なぜ日本だけでなく世界じゅうが右と左に分断されるのか?」という話につながっていきます。たしかに、タイトルが過剰反応された面はあります。

中川:こんなタイトルの本を書いたらネットでは途端にリベラル風の人々、まぁ、本当は単なる糾弾が大好きな人々からネトウヨ認定されちゃうと思うんですよ。それが何かモヤモヤしたんですよね。だって別に橘さんはネトウヨの味方でもなんでもないじゃないですか。

橘:じつはこれは両極端で、朝日新書から出ているのだから、「朝日ぎらい」な右派を批判する(朝日新聞を擁護する)本にちがいないと、発売直後は読んでもいない、というか目次すら見ないひとたちからずいぶんバッシングされました。雰囲気が変わったのはしばらくして、実際に読んだひとが「“安倍政権はリベラル”と指摘しているし、リベラルを批判してるじゃないか」というようになってからですね。

 朝日的なリベラル(戦後民主主義)の欺瞞やダブルスタンダ-ドを批判するのがこの本のひとつのテーマなのですが、それを他の出版社から出せば、あっという間に「橘玲がネトウヨになった」といわれるのは最初からわかっていました。実際、SNSの反応でも、「タイトルを見たときは“いよいよ橘玲もネトウヨ商売か?”と思ったけど、版元が朝日新書だからそうでもないのか」というコメントがいくつもありましたから。朝日を批判するからこそ、この本を朝日新書以外から出すつもりはなかったですね。

中川:ただ、最近ではそうした対応も「防波堤」にはならなくなってきているんじゃないかという気がしています。最近は、朝日新聞が両論併記をしたと言うだけで、リベラルから怒られる時代になっちゃってるんですよ。杉田水脈氏の「LGBTは生産性がない」という暴論とか、東京医科大学が入試で女子受験生の点数を低くしていたとかの問題についてリベラルがデモを起こします。デモ自体は妥当な主張をしていると思うのですが、そのデモを取材した朝日新聞が、杉田氏の意見に一定の支持を示す識者のコメントとかも取るんですね、一応。すると、「朝日は両論併記をしやがってバカか」という反応が出て来る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン