タワマンというものは、近くから見ていて美しい造形とは言い難い。むしろ圧迫感や威圧感を人の心に生じる建造物ではなかろうか。ところが、多くの日本人はタワマンも含めた超高層の建築物を違和感なく受け容れる傾向にある。
ヨーロッパの街では新興のビジネスエリアには超高層のビルが建てられているが、中世以来の旧市街ではほとんど超高層建築が見られない。つまり、超高層建築を必要悪と見做しているのだ。
日本人にはそういう感覚が薄い。京都市や鎌倉市、軽井沢町、金沢市など一部の自治体を除いて、今まで無防備にタワマンや超高層建築を受け容れてきた。その結果、美しい街並みが導かれたのだろうか。
ただ兵庫県神戸市はようやく、タワマンがもつ造形としての醜悪さに気付いたように思える。
2019年6月、神戸市が街の中心部である三宮での住宅建設を禁止したうえ、その周辺の新神戸や元町、JR神戸駅近辺でも高層のタワマン建設を原則規制する方針を固めた、と報道された。久元喜造市長は以前からタワマンに懐疑的な発言を繰り返していた。今回も「神戸を大阪のベッドタウンにはしたくない」という意向を示している。
私は住宅に関するジャーナリズム活動を始めて約10年になる。最初の頃、タワマンに関する懐疑的な発言を行う同業者はほとんどいなかった。世間の大部分はタワマンに関して肯定的だと感じた。しかし、最近はやや変化を感じる。神戸市の例もあるように、タワマンに対する拒否感さえ表現される事例を多く見かけるようになった。