もっとも夏休みの自由研究は、子供より親の課題として定着しているのは周知の通りです。いまの小中学生は夏休みであっても塾や習い事に忙しい子が多く、家にいてもゲームやネット(SNSなど)に時間を取られて、じっくりと自由研究に取り組む余裕がないようです。そのため、親が手伝う「関与率」が年々高まっているとのデータもあります。自由研究(宿題)の代行業者が話題となったのも記憶に新しいところです。
自主的に行うにしても、今は工作にせよ自然観察にせよ、書店やネットを探れば自由研究のテーマ選びから完成イメージまで“指南”してくれる材料はたくさん見つかりますし、それを真似るだけの子どもが続出しています。夏休み明けに同じテーマの作品が多数提出されるため、初めから自由研究のテーマをいくつか決めている学校まであるそうです。これでは、まったく自由じゃない自由研究といえます。
本来、夏休みの宿題の目的とは、休み中の生活習慣や学習習慣を崩さないことにあります。規則正しい生活から解放され、時間にルーズになり、夜更かしするなど生活習慣のリズムを乱してしまうと、学力の維持向上が難しくなってしまうからです。
規則正しい生活習慣を保つ意味では、家庭の手伝いも立派な自由研究のテーマになります。お母さんがする家庭内の仕事を箇条書きし、その中のいくつかを行うのです。掃除、洗濯、料理、配膳、食器洗い、片付け──じつは、家庭内の手伝いにはたくさんの学習的要素が詰まっています。
まず時間を感じることで「時間的知性」という、その人の持つ能力になります。朝、自分から起きて、新聞を取って朝食づくりの手伝いをする。これだけでも、子どもの精神面の強さになり、時間を意識できる能力を身につけられます。
料理をすれば食材の名前を知り、料理法から水と油と温度を測り、そして、味付けという濃度の学習もできます。さらに食器洗いまで手伝えば、食器の形状や特徴を指先手先で感じ取ることができますし、整理整頓のノウハウも身につきます。こうした家事の手伝いから学んだことを丁寧にまとめるだけで、十分な自由研究になるのです。