なにしろ、アウトレットモールは2010年以降、全国に8施設しかオープンしておらず、既存のモールは1990年代~2010年までが開業のピークだったということになります。どうして新規開業にブレーキがかかったのか、いろいろな理由が考えられます。
まず1つ目は、全国の主要な地方にくまなく大型アウトレットモールができてしまったため、これ以上、来店客数を見込める広大な場所が残っていないことが挙げられます。
アウトレットモールは都心に近い立地のほうがいいわけではなく、観光やドライブついでにクルマで郊外を訪れる人たちをターゲットに、近隣や施設内に有名なレジャー施設や豊富なグルメ店舗があることのほうが重要視されています。長島スパーランド(三重)が近くにある「ジャズドリーム長島」(三井アウトレットパーク)などは、その好例です。そうした近隣レジャーと一体化したモールの新規開発は、そう簡単にできるものではありません。
次に考えられる理由としては、わざわざ郊外のアウトレットモールで洋服などを買わなくても、自宅付近にあるジーユーやH&Mなど低価格ブランド店で十分だと考える人が増えたからではないでしょうか。そのため、アウトレットを訪れる人の中には、レジャーついでに立ち寄って食事をするだけで、短い滞在時間で帰るファミリー層も多くみかけます。
ちなみに、近年は同じモール内であらゆる買い物ができる「ワンストップショッピング」を堪能する外国人観光客が増えてきたため、インバウンド狙いのテナントが増えているのも特徴です。
そして、3つ目はネット通販の普及ではないかと考えています。ネット通販にはECモール、ブランド独自店を問わず、常に売れ残り品や値下げ処分品も並んでいます。実際に各サイトでは店頭ではとっくになくなっている去年の商品が値下げされて並んでいることも珍しくありません。これを活用すればわざわざ遠方にあるアウトレットモールに出かける必要はありません。
ZOZOTOWNが、昨年末に打ち出して半年後に廃止となった割引サービス「ZOZOARIGATO(ゾゾアリガトウ)」は業界では物議を醸し、短期間で廃止となりました。有料会員になれば、初回30%オフ・次回以降10%オフで買えるというサービスでその割引分はZOZOが負担するという内容でした。
オンワード樫山やライトオンはこれに反発してこのサービスから撤退しましたが、「ZOZOが自腹で割り引いてくれるのだから、新商品を並べずに在庫処分品を並べてアウトレット的に使えば効果的だ」と言って撤退しなかったブランドもありました。このように、インターネット通販は在庫処分にことのほか適しているのです。
郊外レジャーと一体化した既存のアウトレットモールは、今後も人気テナントの入れ替えや増床などをしながら一定の売り上げや客数を確保していくでしょうが、これから新規のアウトレットモールが次々と開業するということは考えにくくなりました。
単なる「在庫処分の低価格売り場」としての存在価値が薄れるアウトレットモールは、今後は百貨店やショッピングセンターといったリアル店舗を持つ流通業のみならず、ネット通販との戦いも一層激化していくものと見られます。これもまた時代の流れといえそうです。