「そもそもアメリカは公的保険制度が不十分で、薬価を抑えることより製薬会社がどんどん儲けて経済を回すほうが望ましいという考えが許容されており、薬価が高くなりがちです。しかも会社の経営に“モノ言う株主”が口を出す文化が根強い。レムデシビルについては『50万円くらいの価値がある』との議論もあったが、暴利を貪るとの批判もあり、最終的に25万円の設定になったようです」
◆インフル治療薬は安いのに…
評価が難しいのは“原価”が極端に安いことだ。
「レムデシビルの原材料にかかる費用は10日間分で1000円程度との海外報道もある。ただし薬の開発費は、工場の設備投資や大規模治験などにかかった費用を含めて算出するもの。新薬の開発費は少なくとも1000億円程度が相場といわれており、レムデシビルも同様とされていますが、中身はブラックボックスで、本当はいくらかかったのかはわかりません」(谷本医師)
他の薬と比較してみると、抗ウイルス薬として身近なインフルエンザ治療薬は、レムデシビルほど高額ではない。タミフルは、1回の治療に先発品で2720円、ジェネリックでは1360円だ。2018年3月発売の新薬・ゾフルーザでも1回5000円程度だ。
こうした違いの背景には、アメリカならではの「理屈」もある。
「治験の結果、レムデシビルを投与すると回復までの入院期間が4日間短縮されました。国民皆保険のないアメリカで4日間入院すると100万円以上の費用がかかります。『それが25万円なら十分お釣りがくるじゃないか』という論理も価格設定の根拠といわれています」(谷本医師)
つまり、患者が“いくらまでなら払うか”で値付けされている側面もあるようだ。
※週刊ポスト2020年7月24日号