「必ず声優になる」とファンに宣言していた秦佐和子(時事通信フォト)

「必ず声優になる」とファンに宣言していた秦佐和子(時事通信フォト)

 他にも、元NGT48の長谷川玲奈(はせがわ・れな)や元HKT48の山田麻莉奈(やまだ・まりな)が、グループ卒業後は声優事務所クロコダイルに所属し活動中。乳がん手術を受けたことを公表して話題になった元SKE48の矢方美紀(やかた・みき)も、2021年放送予定のアニメ『シキザクラ』で声優に挑戦することが発表されている。

 声優に転身する元アイドルたちを、アニメ業界関係者はどのように見ているのか? アニメ情報誌「月刊ニュータイプ」(KADOKAWA)などに寄稿し、オタク系カルチャーへの造詣が深いアニメライターの前田久氏は、最近の声優業の在り方について次のように解説する。

「アイドルやバンド、ラップといった音楽要素を作品の中心に据え、声優陣が作中のキャラクターさながらのパフォーマンスを披露する──そのようなライブイベントを収益の大きな柱とするコンテンツが多く登場する昨今、声優という職業に求められる技能は、ますます多岐に渡るようになっています。

 一言でまとめれば、現在の声優はマルチタレントとしての能力を求められる機会が増えているわけです。それは裏を返せば、優れた歌やダンス、楽器演奏、トークなどのスキルをすでに備えた別ジャンル出身の人材が、声の芝居の技術を身につけることで、声優としての仕事を得るチャンスが増えたことを意味しています。こうした状況で、アイドルとして長年活躍し、たしかなパフォーマンススキルを身につけている元アイドルたちがアニメ業界で重宝されるのは、自然な流れといえるでしょう」

 たしかに、前述した佐藤も秦もそれぞれ『アイドルマスター シンデレラガールズ』、『BanG Dream!』と、ライブイベントで人気を集めるコンテンツに起用されてきた。そのようなアニメ・声優業界の現状を踏まえた上で、前田氏は彼女たちをこう激励する。

「率直に言えば、元アイドルという肩書きから下駄を履かせた状態でキャスティングされ、肝心の声の芝居が追いついていないように感じられるケースもしばしば見受けられます。しかし、これは元アイドルに限らず、新人声優が配役された際にはままあることですし、本人の熱意と周囲の適切な指導があれば、技術は磨かれていくことでしょう。暖かく、また同時に、厳しい目で見守りたいものです」

 声優による音楽ライブが当たり前のものになった今、AKB48グループ出身の声優がチャンスをつかむ機会は増えているらしい。業界の現状を追い風に、さらなる飛躍が期待できるだろうか。

●取材・文/原田イチボ(HEW)

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