国内

田中角栄首相を辞任に追い込んだ外国特派員協会の歴史的会見

日本のメディアは沈黙していたが、ここから火が付いた(写真/FCCJ)

 1945年11月に、日本に駐留していた従軍記者らによって設立された「日本外国特派員協会」(FCCJ)では、衝撃的な記者会見から報道の自由を象徴するような会見まで、さまざまな会見が開かれてきた。

 数々の歴史的な会見の中でも、カルドン・アズハリFCCJ会長が「疑いなく、最も忘れがたい報道のひとつ」と位置付けるのが、1974年10月22日に田中角栄首相(当時)を招いて開いた報道昼食会だ。当時、日本の新聞やテレビなど大手マスコミが黙殺していた金脈問題について、外国人特派員たちが容赦なく追及。田中首相の失脚を加速させた会見として知られる。

 金脈問題の嚆矢そのものを放ったのは、会見の13日前に発売された月刊誌『文藝春秋』でジャーナリストの立花隆氏が発表したレポート「田中角栄研究──その金脈と人脈」だった。しかし、日本の新聞、テレビは沈黙。

 後に立花氏は著書『田中角栄研究 全記録(上)』で、「その反響は当初、めだたないものだったが、『ニューズ・ウィーク』、『ワシントン・ポスト』が取り上げ、次いで十月二十二日に外人記者クラブでの首相記者会見でこの問題が取り上げられ、それが各紙のトップ記事となるに及んで、完全に一つの政治問題と化してしまった」と振り返っている。

 会見では、日本の政治家や政党にしがらみも忖度もない外国人特派員たちから、『文藝春秋』の報道や金権政治に関して辛辣な言葉やストレートな質問が相次いで繰り出された。田中首相のいつもの明瞭な物言いや天才的な人心収攬術はなりを潜め、質問攻めに汗をぬぐいながら、しどろもどろになり、漠然とした回答は次の厳しい質問を呼んだ。金脈問題追及の場と化した会見を田中首相は予定よりも早く、自ら打ち切った。翌日から堰を切ったように、日本のメディアは大々的に金脈問題を連日報じた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
中森明菜復活までの軌跡を辿る
【復活までの2392日】中森明菜の初代音楽ディレクターが語る『少女A』誕生秘話「彼女の歌で背筋に電流が走るのを感じた」
週刊ポスト
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
世紀の婚約発表会見は東京プリンスホテルで行われた
山口百恵さんが結婚時に意見を求めた“思い出の神社”が売りに出されていた、コロナ禍で参拝客激減 アン・ルイスの紹介でキャンディーズも解散前に相談
女性セブン
期待される2人の先行きが視界不良(左から大の里、二所ノ関親方)
【角界ホープ2力士に暗雲】尊富士は横綱・照ノ富士と宮城野親方の板挟み、大の里は師匠・二所ノ関親方の管理能力に不安要素
週刊ポスト
真美子夫人は「エリー・タハリ」のスーツを着用
大谷翔平、チャリティーイベントでのファッションが物議 オーバーサイズのスーツ着用で評価は散々、“ダサい”イメージ定着の危機
女性セブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者(51)。ストーカー規制法違反容疑の前科もあるという
《新宿タワマン刺殺事件》「助けて!」18階まで届いた女性の叫び声「カネ返せ、カネの問題だろ」無慈悲に刺し続けたストーカー男は愛車1500万円以上を売却していた
NEWSポストセブン
氷川きよしが独立
《真相スクープ》氷川きよしが事務所退所&活動再開 “独立金”3億円を払ってでも再出発したかった強い思い
女性セブン
初となる「頂上鼎談」がついに実現!(右から江夏豊、田淵幸一、掛布雅之)
【江夏豊×田淵幸一×掛布雅之の初鼎談】ライバルたちが見た長嶋茂雄秘話「俺のミットを“カンニング”するんだよ」「バッターボックスから出てるんだよ」
週刊ポスト
曙と真剣交際していたが婚約破棄になった相原勇
《曙さん訃報後ブログ更新が途絶えて》元婚約者・相原勇、沈黙の背景に「わたしの人生を生きる」7年前の“電撃和解”
NEWSポストセブン