「よそ者というのは、地域的なよそ者だけではない。自分たちの決まりを守らない人は、すべてよそ者。つまり、村八分の発想と同じです。
現代社会ではだいぶ薄れ、廃れてきたけれど、そうした心理状況がコロナ禍でムクムクよみがえりつつあります。同調圧力の強い日本では、いったん危機的状況に陥ると“挙国一致”を周囲に強いる傾向がある。地域が団結するのに参加しないと『この危機的な状況に何を考えているんだ』と非難する行為が各地で起きるのはそのためです」
コロナウイルスが怖いのは、お互いに非難し合って疑心暗鬼になり、世の中が分断されていくこと。つまり、地域を守る郷土愛や、家族を守る家族愛が過剰になると、感染拡大防止に、むしろ逆効果になるという点だ。
ある看護師が子供連れで公園に出かけた際、「あなた病院のかたよね」と帰るように促された例もある。この発言をしたのは普通の人だ。
「注意や防衛を一歩間違えると、差別・非難・攻撃する人になってしまいます。人間はそういう罠にかかりやすいのです」
※女性セブン2020年9月10日号