芸能人に限らず、薬物を使用した者に対しては、「家族が全面的に支えるべき」「家族が薬物を使わないよう見張るべき」という風潮があるが、それはふさわしくないようだ。

 横川氏によれば、警察の世話になってはじめて家族は本人が禁止薬物を使っていたことを知ることがほとんどだという。そうなった場合、家族はまず家族会とつながってラクになり、学ぶことが大切だ。薬家連や家族会、薬物依存症回復施設のダルクでは、家族に対して「依存症の本人に自ら生きる道を選び取る決断をさせる」ようアドバイスするという。

「本人が警察から戻ってきたら、『回復の道はある。全国にダルクという薬物依存症回復施設があるから頼ってみなさい』といって連絡先を教えます。そして、『そこに行くのを選ばないのなら一人で生きていきなさい』と伝えます。どちらを選ぶか、自分で決めなさいということ。そして、どちらを選んだ場合でも、その後は手を出さず、見守る立場に徹するのです」

 家族は家族会でこの「突き放し」を学ぶ。これは薬物依存者の回復のためには必ず通らなければならない過程だという。ただ、家族が「手を出さない」決断をするのは容易ではない。相当の覚悟がいる。相手が子どもである場合はなおさらだ。子に手をかけることでしか愛情の示し方を知らない親の場合は、「突き放すことが愛情」ということがなかなか理解できない。

「親は最初、このことが理解できません。家族会に何度も通ってやっとわかる。家族は基本的に何もできない。そう考えることが、本人の回復のためには重要なのです。だから、家族ができることは、『何もしないこと』。逆説的ですが、この方法で多くの依存症患者が回復しているのも事実なのです」

 ダルクは全国に90箇所程度あり、入所と通所の施設がそれぞれある。自分の生活スタイルや人間関係で合う施設を選ぶことができる。子どもが入所施設から出てきたときには、同居せず、自活させる。そして、回復の兆候が見えてきたときには、「お金を渡したりもせず、『ああしなさい、こうしなさい』と言うこともせず、『よくやってるね』『がんばっているね』と認め、励ます言葉をかけてあげること」(横川さん)が大切だという。

 親子関係においては、ときに何もしないことは、何かをするより難しい。家族が本人との接し方を変えることの意味は、双方にとって決して小さくない。

●取材・文/岸川貴文(フリーライター)

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