国際情報

トランプ「胎児の細胞」利用した新薬で保守派総スカンの危機

自分だけは特別扱い?(AFP=時事)

 アメリカ大統領選挙は「トランプの最後の逆襲」に焦点が移っている。そのトランプ大統領に新たな悩みの種が植え付けられた。コロナウイルス感染症からの「早すぎる回復」には、彼の政治基盤を揺るがす「禁じ手」が使われたというのである。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。

 * * *
 トランプ大統領のコロナウイルス感染症からの回復が魔法のように早い。これまでアメリカでは21万人以上の尊い命が奪われている。なぜ、74歳のトランプ大統領が、ウォルター・リード陸軍病院にわずか3日間入院しただけでホワイトハウスに帰り、翌日には大統領執務室に入って仕事に復帰することができたのか?

 精神に異常をきたすなどの副作用もあることから、通常は重症者に使うステロイド剤を使用したことは医師の治療薬リストで明らかになった。しかし、ステロイド剤は炎症を鎮める対処療法にすぎず、コロナウイルスに直接働くものではない。ウイルスを叩くためには別の薬剤が使われた。それが、8g投与されたと発表された「ポリクローナル抗体カクテル」である。コロナ治療薬として認可されたものではない。

 ところで、報道によればトランプ氏の医師団や側近たちは、今回の治療の前に守秘義務契約を結ばされたそうだ。一般的に医師には患者のプライバシーを守る義務があるが、スタッフまで含めてこのような厳重な契約で縛るのは異例と言えるだろう。彼らは治療の詳細やその決定の過程について、生涯しゃべることができなくなった。

 そこまでしてトランプ氏が隠したかった治療こそが、ポリクローナル抗体カクテルだった可能性がある。これは、免疫細胞であるB細胞から、特定のウイルスやがんに対する抗体を取り出して複製し、薬品にするモノクローナル抗体技術が使われている。筆者はかつてハーバード大学の小児がん研究者から詳しく取材したことがあるが、医学にとってすばらしい技術である半面、使われる細胞の由来について倫理的な懸念が生じるという厄介な問題もはらんでいる。ニューヨーク・タイムズが以下のように報じている(一部要約)。

《何十年もの間、胎児組織は多くの医学的研究に欠かせないものだった。現在、多くの企業が使用している細胞の元になった293T細胞株は、1970年代に中絶された胎児の腎臓から採取したものだ。同様の細胞株Per.C6は、1985年に流産した妊娠18週目の胎児の網膜細胞から得られた》

 トランプ氏に投与された薬品は、アメリカのバイオテクノロジー企業・リジェネロン社が作製したモノクローナル抗体2種類を混合したもので、同社は上記の293T由来の細胞を一部の実験に使用したことを同紙の取材に認めている。

関連記事

トピックス

手指のこわばりなど体調不安を抱えられている(5月、奈良県奈良市
美智子さま「皇位継承問題に口出し」報道の波紋 女性皇族を巡る議論に水を差す結果に雅子さまは静かにお怒りか
女性セブン
ちあきなおみ、デビュー55周年で全シングル&アルバム楽曲がサブスク解禁 元マネジャー「ファンの声が彼女の心を動かした」
ちあきなおみ、デビュー55周年で全シングル&アルバム楽曲がサブスク解禁 元マネジャー「ファンの声が彼女の心を動かした」
女性セブン
『EXPO 2025 大阪・関西万博』のプロデューサーも務める小橋賢児さん
《人気絶頂で姿を消した俳優・小橋賢児の現在》「すべてが嘘のように感じて」“新聞配達”“彼女からの三行半”引きこもり生活でわかったこと
NEWSポストセブン
「マッコリお兄さん」というあだ名だった瀬川容疑者
《川口・タクシー運転手銃撃》68歳容疑者のあだ名は「マッコリお兄さん」韓国パブで“豪遊”も恐れられていた「凶暴な性格」
NEWSポストセブン
自転車の違反走行の取締りはたびたび実施されてきた。警察官に警告を受ける男性。2011年(イメージ、時事通信フォト)
「青切符」導入決定で自転車取締りが強化 歓迎の声がある一方で「ママチャリで車道は怖い」
NEWSポストセブン
民主党政権交代直後の政権で官房長官を務めた平野博文氏
【「年間約12億円」官房機密費の謎】平野博文・元官房長官 民主党政権でも使途が公開できなかった理由「自分なりに使い道の検証ができなかった」
週刊ポスト
NEWS7から姿を消した川崎アナ
《局内結婚報道も》NHK“エース候補”女子アナが「ニュース7」から姿を消した真相「社内トラブルで心が折れた」夫婦揃って“番組降板”の理由
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【厳戒態勢】「組長がついた餅を我先に口に」「樽酒は愛知の有名蔵元」六代目山口組機関紙でわかった「ハイブランド餅つき」の全容
NEWSポストセブン
今シーズンから4人体制に
《ロコ・ソラーレの功労者メンバーが電撃脱退》五輪メダル獲得に貢献のカーリング娘がチームを去った背景
NEWSポストセブン
菅原一秀(首相官邸公式サイトより)と岡安弥生(セント・フォース公式サイトより)
《室井佑月はタワマンから家賃5万円ボロビルに》「政治家の妻になると仕事が激減する」で菅原一秀前議員と結婚した岡安弥生アナはどうなる?
NEWSポストセブン
真美子夫人とデコピンが観戦するためか
大谷翔平、巨額契約に盛り込まれた「ドジャースタジアムのスイートルーム1室確保」の条件、真美子夫人とデコピンが観戦するためか
女性セブン
(写真/PIXTA)
【脳卒中】“最善のリハビリ”のために必要なこと「時間との勝負」「急性期病院から回復期病院へのスームズな移行」
女性セブン