当時、私はNHKの記者だった。森友学園の籠池泰典理事長(当時)の単独インタビューを撮るため、NHK大阪放送局の応接室で待っていた。するとそこに籠池理事長とともに10人余りの人々が入ってきた。学園の保護者や支援者たちだという。その一人は終始ビデオカメラを回していた。
この映像はネットに流出すると覚悟せねばならない。森友学園に迎合するような質問はできない。だが批判がましいことばかり言えば支持者たちが怒り出してインタビューは成り立たなくなる。迎合でも批判でもなく、聞くべき事を聞き出す。これまでの記者経験で最も緊迫したインタビューの一つだ。
そして、私が籠池理事長と緊張感いっぱいで向き合っていたまさにその頃、赤木俊夫さんは近畿財務局で改ざんをさせられていた。しかもその時、俊夫さんと私はすぐそばにいた。財務省近畿財務局とNHK大阪放送局は隣と言っていいほど近くにあるのである。俊夫さんと私の人生はその時、間近で交錯していた。不思議なご縁を感じる。
日本で2月26日と言えば1936年に起きた二・二六事件だろう。平成の「二・二六事件」は2017年に起きていた。昭和の事件とは違い、人知れずひっそりと。だが日本の道を誤らせるという意味では同じだ。改ざんは国家公務員の倫理観を破壊した。
国を誤らせないため、この事件を忘れてはならない。赤木雅子さんは真相解明を目指して裁判を続けている。森友事件は終わっていない。