とはいえ、「リラックスさせて本音を引き出す」というのは、全てのトークバラエティが意識していることのはずだ。その中で、なぜ『あちこちオードリー』は、本音トークを引き出すことに成功しているのだろうか? テレビウォッチャーでコラムニストの飲用てれび氏は、若林正恭と春日俊彰、オードリーのふたりのバランスに着目する。

「若林は当初、『アメトーーク!』(テレビ朝日)の『人見知り芸人』企画などで注目を集め、華やかなテレビの世界への馴染めなさを語っていました。人見知りは解消されたようですが、その後もテレビや芸能活動、あるいは世間一般への違和感は引き続き口にしています。

 その違和感を言語化する力は、同世代の芸人の中でも随一でしょう。違和感を自分の中で咀嚼し言語化してきた若林なら、テレビでは伝わりにくい話も受け止め、理解し、面白く展開してくれる——。番組に来たゲストが他ではあまり口にしない胸の内を語っているとしたら、彼へのそんな信頼がひとつの理由かもしれません。

 対する春日は、他人への関心をあまり示さない男。自身の内面について主体的に語ることもほとんどありません。時に複雑になる若林とゲストの話には、そんな春日からの『考えすぎだろ』といったストレートなツッコミが心地いい。ふたりのバランスの良さも、ゲストが話しやすい雰囲気を作っているのではないでしょうか」

 若林と春日の絶妙なバランスは、プライム帯という「戦うしかない時間帯」でも通用するか。『あちこちオードリー』に対して、視聴者からは「長寿番組になってほしい」と望む声が相次いでいる。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)

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