「レベル4」までは賠償責任はこれまでと同じ
完全自動運転になるまでの過渡期における損害賠償責任については、国土交通省内の研究会でも議論され、2018年に報告書が公表されている。レベル4までは、自賠責保険や自動車保険は、その内容をもとに補償を行うこととなる。主な論点と、その結論について簡単に見ていこう。
●自動運転システム利用中、運転者は“運行支配”しているといえるか?
自動車損害賠償保障法(自賠法)上、運行供用者は「自己のために自動車を運行の用に供する者」とされている。マイカーの運転者や自動車運転事業者などが該当する。最高裁の判例により、運行供用者は自動車を運行支配して、運行利益を得ている者とされている。
研究会では、自動運転システム利用中「運転者は運行支配しているといえるかどうか?」、つまり、運転者は運行供用者の要件を満たしているかが問題となった。
結論は、自動運転でもクルマの所有者や自動車運転事業者等に運行支配や運行利益が認められるとして、従来の運行供用者責任を維持することとされた。つまり、自賠責保険や自動車保険(対人賠償)は、自動運転中に生じた対人事故についても、従来通り、損害賠償責任が補償されることとなった。
●ハッキングにより引き起こされた事故では、どのように被害者を救済すべきか?
クルマの保有者がセキュリティ対策や保守点検義務を果たしていたにもかかわらず、自動運転システムがハッキングされ、事故が起きてしまったとする。この場合、被害者の救済はどのようにすべきだろうか?
結論は、ハッキングされた自動車は盗難車と同様の考え方で対応可能とされた。つまり、ひき逃げで加害車両が不明な場合などで行われる、政府の保障事業で被害者を救済することとされた。