先日、わが事務所に、どこを叩いても高級官僚で、40才をちょっと超えたHさんが人事異動の挨拶に来た。服装はマトモだけど、肌はボロボロ、目はうつろ。原型がわからなくなるくらい髪が伸びて、一言で言えばヤバい変質者風なんだわ。

 思わず「どーしちゃったの?」と聞いたら、「異動前に片付けなくちゃならない仕事が終わらなくて、1か月くらいまともに家で寝てないんですよー」って笑う目の、まぁ、怖いこと。

「追い詰められると、まず味覚が鈍くなって食べたくない、眠くならないんですよね」と、これは別の官僚の武勇伝?だ。

「なんでこうなるの?」

 さっそくSNSで仲よしのOさん(38才)にチャットで聞いたわよ。Oさんは大手建設会社に勤めた後、議員秘書になった人だ。

 そしたら、「霞が関って、異動のときに、まともな引き継ぎをしない、というかできないんです」と言う。1週間か10日前に内示が出て、バタバタと次の職場に移っていく。後任の役人には1時間くらい会議室で話をしておしまいなんだって。

 それから、こうも教えてくれた。「役人の異動通知には、必ず出身大学と入省年度が書いてあるんです。2つとも役人がものすごくこだわるところで、大学4年生で卒業して、“5年生”で入省。その後“大学10年生”“20年生”になる」って言うの。

 なるほど、学業優秀で高学歴とされる大学にストレートで入って、滞りなく卒業して、国家公務員試験のハードルもサラリと乗り越えた彼らにとっては、どこぞの省庁に入省しても、「お給料の出る大学」って感じ? 回り道も寄り道もせず、というより、そうした道があることも知らず(私に言わせれば、そんな楽しいことも知らず)に役人の一本道を堂々と歩んできた彼らは、世間ズレのしようがないのよ。

 顔見知りの何人かの役人の、老けた少年顔を思い浮かべたら、厚労省の飲み会が行われたのも、なるほど納得したね。世間知らずの大学15年生が、3月の人事異動のドタバタで疲労困憊。判断力をなくした誰かが先輩風吹かせて、「緊急事態宣言明けたし、関係ねーよ。集まれ~!」と号令かけた、かどうかは知らないけど(笑い)、ま、そんなもんでしょ。でなきゃ、このご時世に何の疑問も抱かず、23人もの人たちが深夜まで宴会を開いていたなんて説明つかないもの。

 でも……飲み会よりマズイ、国を支える役人たちのビックリな現実が、まだまだありそうよ。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする

※女性セブン2021年4月22日号

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