6年間使ったランドセルからその子の性格と生き方がわかる
激変する小学生の世界で、どれだけ時間が経っても変わらないものがある。
大阪・豊能郡にある「ランドセルリメイクrural」の平田薫さんは、年間400近くのランドセルを解体して、財布やスマホケースなどの革製品としてリメイクする。
「やっぱりランドセルは小学生の頃の思い出がいちばん詰まっていて、簡単に捨てられないんですね。実際にぼくがこのリメイクを始めたのも、19才になる長男のランドセルを捨てるに捨てられなかったから。ランドセルを買いに行ったときから入学式、卒業式までのストーリーを親御さんはよく覚えているはずです。ぼくも子供とイオンに行っていろいろ背負いながら決めたときの情景は、いまでも目に焼き付いて離れない。卒業して何年も経ってから『思いが詰まっているから、かたちを変えてでも使いたい』と依頼されるかたも多いし、なかには子供が亡くなってしまい、形見として持っておきたいという理由で依頼をいただくこともあります」(平田さん)
小さな体に不似合いなほど大きなランドセルを背負い、初めて校門をくぐった日から、雨の日も風の日も、卒業するまでの6年間、背中のランドセルは子供の成長を見守り続ける。
「面白いもので、依頼された品物の状態を見ると、おとなしかったり、活発だったりという持ち主の性格が浮かんできます。ぼくは子供が3人いますが、やや神経質な長男のランドセルがいちばんきれいで、お兄ちゃん2人の下で活発だった長女が、いちばんボロボロでした(笑い)。それぞれに6年の成長の軌跡が詰まっています」(平田さん)
いつの時代も1人の子供がランドセルとともに歩む6年の尊さは変わらないのだろう。
創刊96年目を迎えた『小学一年生』の長竹俊治編集長も、長く雑誌を作っていても、子供の本質的なところは昔から変わっていないと声をそろえる。
「デジタルが当たり前の世の中になっても、子供の好奇心旺盛で、好きなことを見つけると一直線で夢中になるところは、変わらないように思います。例えば男の子は恐竜や昆虫が好きとか、女の子はパティシエに憧れる子が多いとか、昔から定番の人気のものもあります」
昨年に続き、ウィズコロナの時代に不安はつきないものの、一日ごとに成長する子供の尊い姿を見られることは、親にとって大きな喜びとなる。
「子供が小学生になって楽しみなことはいっぱいありますが、まずはランドセルを背負って自分の足で学校まで歩く姿を見守りたいですね。最初は私や夫がしっかりサポートして、上級生のお友達にも一緒に登校してもらうつもりですが、近いうちにひとりで行けるようになるはずです。
道を覚えてひとりで通うのは本人にとってはものすごい試練だと思いますが、それを乗り越えて成長する姿を見ることを楽しみにしています」(大渕さん)
今年はすでに桜の季節は過ぎ去ったが、新緑のもと、ランドセルを背負った小学1年生を見かけたら、どうか心の中でエールを送ってほしい。時には危なっかしく道路に飛び出しそうになったり、大きな声でにぎやかにおしゃべりしているかもしれない。しかし、半年後には別人のように成長しているはずだ。
誰しもいつか通った道を、新入りがまた辿る──緊急事態が続くなか、おなじみの光景が繰り返される喜びを噛みしめようではないか。
※女性セブン2021年4月22日号