(写真/GettyImages)

「アマニ油」のもとである「亜麻の仁(種子)」。オメガ3系脂肪酸が豊富に含まれる(写真/GettyImages)

「体にいい油」をわざわざ摂取する必要はない

 大前提として、液体の「油」で栄養を摂取しようと考えること自体が間違いだと指摘する声もある。自然健康法に基づいた栄養学を推進する「日本ナチュラル・ハイジーン普及協会」会長の松田麻美子さんが話す。

「いかなる『油』も自然界には存在せず、すべて人工的に工場で抽出したものです。事実、地球上で油を利用している動物は人間以外にいません。オリーブオイルでも、アマニ油でも、実や種の中の脂肪分を抽出する過程で必ず光や空気に触れて酸化が始まっています」

 とはいえ、必須脂肪酸は食事から摂るしか方法がなく、不足すると肌の細胞の老化、免疫不全、脳機能低下など、さまざまな不調を招く。こういった問題を解消するため、現代人に不足しがちな「オメガ3系」が豊富なアマニ油やえごま油を、「ティースプーン1杯分」そのまま摂取することをすすめる意見もあるほどだ。ところが……。

「アマニ油とは、『亜麻』という植物の『仁(種子)』から抽出したオイルのことです。『亜麻仁』そのものには、ビタミンCやE、βカロテン、ファイトケミカルなど、酸化を防ぎ、安定した状態を保つ成分が豊富に含まれています。

 しかし、『アマニ油』は『亜麻仁』の脂肪分だけを搾り取っており、酸化を防ぐ成分はほぼ失われ、非常に不安定な状態となった食品です。これはアマニ油に限らず、すべての油でいえることです。必須脂肪酸であるオメガ3系脂肪酸は、亜麻仁を丸ごと粉末状にしたものを大さじ1杯摂ることで、満たすことができます」(松田さん・以下同)

 丸ごと摂取した亜麻仁は、食物繊維などの栄養素も入っている。そのため、体内で少しずつ分解されて、オメガ3系脂肪酸の栄養成分「αリノレン酸」が放出され、EPA、DHAに変換される。

「油だけになった形で体内に入ると、すでに酸化した『過酸化脂質』に変わっているため、体内で連鎖的に脂質の酸化が起こり、動脈硬化、心臓血管疾患、がん、アルツハイマー病など、あらゆる体調不良の引き金になります」

 また、オメガ3系脂肪酸は、ほうれん草や小松菜、ケールや大根といった野菜や、大豆、小豆、いんげん豆などの豆類にも含まれているため、野菜と豆を中心とした食生活を送っていれば自然と摂取できる。ただし、野菜や豆だけで必要量を摂るとなると相当量が必要になるため、亜麻仁の粉末を一緒に食べたい。さらに、もう1つ、オメガ3系を油で摂取することについて、松田さんには懸念点がある。

「オメガ3系には、過剰に摂取しているオメガ6系の働きを抑える効果がありますが、両者のバランスを取る必要があります。理想はオメガ6系が1~4で、オメガ3系が1の割合。しかし、現代人はオメガ3系の20倍もオメガ6系の脂肪酸を摂っている。しかもアマニ油を摂る人というのは、現在の食事にプラスアルファで摂取する人がほとんどです。それでは健康効果がないどころか、カロリーを余分に摂取して肥満の原因になります」

「断油」を決行した林さんの家庭では、その後、家庭用の調理油としてアマニ油やえごま油を利用するようにしている。奥山さんも賛同する。

「オメガ6系の油を一切使わなかったとしても、リノール酸は肉にも魚にも野菜にも含まれています。現代の生活において、不足するということはまずありません」(奥山さん)

 亜麻仁のほかにも、「オメガ3系が豊富」とされる食べ物がある。それが「くるみ」だ。近年、認知症の改善にも効果が期待され注目を集めているが、意外な事実がある。

「くるみには、オメガ3系脂肪酸の約5倍ものリノール酸が含まれています。くるみが健康にいいという意見は、単純にオメガ3系脂肪酸の含有量が多いことに着目しているだけで、リノール酸との比率を考慮していないのではないでしょうか」(奥山さん)

 なお、ほかのナッツのオメガ3系脂肪酸の含有量は、くるみよりはるかに少ない。

「アーモンドはオメガ3系の量を1としたとき、オメガ6系はおよそ400倍余りです。ナッツ以外では、アボカドが15倍、大豆は約5倍です」(松田さん)

 健康ブームに流されず、不要な油を見直すことが必要だ。

※女性セブン2021年4月29日号

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