立田敦子さんのセレクト
・スカっとできる映画
『プラダを着た悪魔』
モード誌のカリスマ編集長ミランダと見習いアンディのバトルを描いた、実話に基づくドラマ。監督:デビッド・フランケル、出演:アン・ハサウェイ、メリル・ストリープほか。2006年・米。110分。
ブルーレイ2619円★。デジタル配信中。発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン。
・キュンとできる映画
『君の名前で僕を呼んで』
北イタリアの避暑地を舞台に、少年エリオと大学院生のひと夏の恋を描く。監督:ルカ・グァダニーノ、出演:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマーほか。2017年・伊、仏、米、ブラジル合作。132分。
ブルーレイ&DVD発売中。ブルーレイ5280円、DVD4290円。発売元:カルチュア・パブリッシャーズ、販売元:ハピネット・メディアマーケティング。
まず、『プラダを着た悪魔』で描かれているのがNYのモードな世界。それだけでウキウキするし、最後は一発逆転のスカッと感もあり、精神衛生上いい映画です(笑い)。編集長のミランダ(メリル・ストリープ)の桁違いのゴージャスぶりも笑えますが、単なるパワハラ映画ではなく、働く女性に対する深い考察が背景にある。
ミランダが厳しいのは、それだけのものを背負っているからで、「あなたがどうでもいいと思って着ているそのセーターは“ブルー”じゃなくて“セルリアン”。私たちが数年前に作った流行が、巡り巡ってそこにあるの」とアンディ(アン・ハサウェイ)の未熟さをたしなめるシーンは印象的です。
もう1つ、『君の名前で僕を呼んで』は、タイプの違う美形男子がピアノを弾き、文学を語る。そして、自転車に乗って湖でデートする。キュン死映画の設定として完璧じゃないですか。
監督のルカ・グァダニーノは青春の萌えポイントを描くのがすごく上手。
結局、ひと夏の恋に終わりますが、打ちひしがれる少年(ティモシー・シャラメ)に対し、父親が、恋の痛みはちゃんと受け止めなさいとアドバイスをするときのひと言、「ひとの心と肉体はたった一度しか与えられないもの。いまはただ悲しくつらいだろう。だが、お前が感じた喜びをその痛みとともに葬ってはいけない」というせりふも深い。この作品が好きな人は、同監督のテレビシリーズ『僕らのままで』もおすすめです。
【プロフィール】
立田敦子さん/映画ジャーナリスト。雑誌やテレビなどで活躍中。著書に『どっちのスター・ウォーズ』『おしゃれも人生も映画から』(共著)(いずれも中央公論新社)など。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2021年5月6・13日号