国内

「政治に殺される」広告も登場 政府の無策とサンクコスト・バイアス

ああ

オリンピック開催まであと70日しかない(写真/時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、ワクチン接種の対応に出遅れ、ちぐはぐさも目立つ政府の新型コロナウイルス対策について。

 * * *
「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される」。5月11日に掲載された宝島社の新聞広告は衝撃的だった。

 朝日、読売、日本経済新聞の朝刊の全面広告には、戦時下にタケヤリ訓練を行う少女たちの真ん中に、日の丸のように真っ赤なウイルスが置かれている。賛否両論はあるだろうが、これを見ていると、日本は日の出国というよりウイルスに翻弄されている国に思えてくる。

 高齢者がワクチン接種を予約しようにも電話はつながらず、全国各地の予約システムはダウン、窓口は長蛇の列だ。PCR検査数は他国と比較してあまりに少なく、未だに本当の感染者数も分からないまま。悲鳴を上げている飲食店は時短営業に加えて酒類の提供も禁止され、一方で公園などには路上飲みの対策として進入禁止のフェンスが設置された。さらに、イベントや興業は開催も集客も可能なのに、鑑賞するだけの映画館は営業自粛。なんだかちぐはぐなことばかりだ。

 それでも政府は国民に対し、ここまで自粛してきたのだからもう少し我慢してくれとお願いばかり続ける。やってきたことを無駄にするなと言わんばかりだ。国民の側にもあるだろう「ここまでやってきたのだから、もう少し辛抱すれば」という「サンク・コスト」の心理的傾向を利用する。だが今のままでは、政府の言う通り我慢をしていても、一向に救われる日も明るい未来も見えてこない。“政治に殺される”、日を追うごとにその思いが強くなる。

 12日夜、菅義偉首相が記者団の前で述べた言葉からもそう感じた。東京、大阪など4都府県に発出していた緊急事態宣言は今月末まで延長され、愛知県と福岡県にも発令されたことを受け、首相は暗い表情のまま、こう言った。

「延長は大変心苦しい思いでありますけど、ゴールデンウィークが終わった今、一番大事な時期でありますので、国民の皆さんのご協力をお願い申し上げます」

“一番大事な時期”とは、何に対してなのかと考えれば言わずもがな、東京オリンピックの開催だろう。緊急事態宣言では中途半端な対策ばかり、政府の覚悟も本気度も見えてこないのだから、そう思いたくもなる。

関連記事

トピックス

報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
雅子さまは免許証の更新を続けられてきたという(5月、栃木県。写真/JMPA)
【天皇ご一家のご静養】雅子さま、30年以上前の外務省時代に購入された愛車「カローラII」に天皇陛下と愛子さまを乗せてドライブ 普段は皇居内で管理
女性セブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
東京駅17番ホームで「Zポーズ」で出発を宣言する“百田車掌”。隣のホームには、「目撃すると幸運が訪れる」という「ドクターイエロー」が停車。1か月に3回だけしか走行しないため、貴重な偶然に百田も大興奮!
「エビ反りジャンプをしてきてよかった」ももクロ・百田夏菜子、東海道新幹線の貸切車両『かっぱえびせん号』特別車掌に任命される
女性セブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
NEWSポストセブン