学部が多い近大受験は「安全志向」
2016年からは私立大の難化が進んだ。地域創生の一環として、大都市圏の大手大学の定員を超過しての入学に一定の歯止めをかけることになったからだ。
2015年まで大規模私立大では定員の1.2倍まで入学を認めていたが、段階を経て2018年までに1.1倍に減らすことになった。定員オーバーすると国からの助成金がもらえない。入学者を減らすことは合格者を絞ることにつながり、私立大の入試は2016年から難化した。
そのため、安全志向から、学部がたくさんあって交通の便も良い近畿大を併願する受験生が増えた。トップに立った2014年に初めて10万人超を果たし、翌2015年から2018年まで毎年志願者が増えていった。
入試方式の多様化で膨張する「延べ志願者数」
さらに、受験生が合格を獲得しやすくする入試方式の多様化も志願者増の一因となった。受験料の割引、さらには一度の受験で、何度も合否判定が受けられる入試方式を導入した。その結果、近畿大では1人5つ以上の学部・学科を併願している。
近畿大と実志願者はそう変わらない慶應義塾大の延べ志願者数は3万6681人だから、近畿大より10万人近く少ない。慶應は1学部1方式の入試しか実施しておらず、延べ志願者数と実志願者数の差は大きくないのだ。
以前は今の慶應と同じで、ほとんどの大学が学部の入試日は1日で、延べ志願者数の増加分は、学内での他学部との併願者だけであった。ところが、ある大学が志願者数のカウント方法を変え、延べ志願者数と実志願者数の乖離が始まった。
例えば文学部に英文、仏文、独文の3学科があり、出願時に第3志望まで記入できたとする。それぞれ第1志望、第2志望、第3志望の順で、英文が500人、200人、100人、仏文が250人、300人、50人、独文が120人、300人、100人だったとしよう。
以前ならこの文学部の志願者は第一志望者の合計の870人と発表されていた。ところが、今は多くの大学が全合計の1870人と発表している。第2、第3志望とはいえ、志願者に変わりはないわけで、倍以上に増えたことになる。
こういった計算方法で、少子化の中でも複数の入試方式を実施する大学では、どこの大学も志願者が増えてきた。これが1学部内にとどまらず、学部を超えた併願も認めることで、延べ志願者数が膨張していったわけである。