ライフ

建築家・丹下健三の強い執念「まあ、これでいいか」とならない凄さ

建築家・丹下健三の思い出を教え子の月尾氏が振り返る(時事通信フォト)

建築家・丹下健三さんの思い出を教え子の月尾嘉男氏が振り返る(時事通信フォト)

 日本人建築家としていち早く世界で活躍した「世界のタンゲ」こと、丹下健三。広島平和記念資料館や香川県庁舎などの建築で知られる丹下は、1963年、新設された東京大学工学部都市工学科の教授に就任した。建設デザイン・設計分野におけるコンピュータ利用の草分け的存在、東京大学名誉教授・月尾嘉男氏(79)は、その教え子のひとりである。月尾氏が、自らの“師匠”との日々を振り返る。

 * * *
 丹下先生の教育者、指導者としての要素はゼロでした。よく「芸事は盗むもの」と言われますが、まさにそれに近い。私自身、丹下先生から何かを教えてもらった経験はありません。丹下先生だけでなく、当時の建築家はみな「盗め」だった。

 丹下先生は非常に強い執念の持ち主でした。1960年に倉敷市の市庁舎を設計しましたが、大谷幸夫さん(後の東大都市工学科教授)はデザイン案を「毎日10枚描け」と指示され、一晩かけて10枚作って提出すると、そのなかから1つ選んでまた「これをもとに10枚描け」と言われる。毎日がその繰り返しで、500枚以上は描かされたそうです。

 私も島根大学移転の際に、丹下先生の指示でさまざまな案をコンピュータでシミュレーションしました。建物を建てる場所を決めるために土地のデータを集め、道路や地形だけでなく日当たりなどのデータも入力して複数のプランを提出する。

 すると丹下先生にこう言われるんです。

「君、もう少し考えたら」

 さらにシミュレーションして再び提出すると、「もうちょっと計算したら」。

 決して「まあ、これでいいか」とならないのが丹下先生の凄さで、だからこそあれだけの実績を残せたのだと思います。

 大阪万博(1970年)の時も私がパビリオンの配置をシミュレーションしました。来場者が入り口から入ってきた時に、会場全体がどう見えるか。さらに丹下先生からは「入り口から一気に客が入ったら、その流れはどのあたりで渋滞になるか」とも質問されました。

関連記事

トピックス

体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
睡眠研究の第一人者、柳沢正史教授
ノーベル賞候補となった研究者に訊いた“睡眠の謎”「自称ショートスリーパーの99%以上はただの寝不足です」
週刊ポスト
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
女性セブン