新型コロナワクチンは高齢者の2回目接種率が8割を超え、それ以下の年齢を含む一般接種も5割に近づきつつある。大規模接種会場や大企業の職域接種では、多くの人が列に並んで次々と注射を受けており、7月以降は1日の接種回数が100万回を超える日が増えている。
そうした大人数の接種会場では、注射を担当する医師(医療従事者)が接種者に、既往歴や服用中の薬、その日の体調や体温などを質問するが、“お約束”となっているのが「利き腕ではないほうに打ちますね」という確認だ。副反応として約9割が「腕の痛み」を訴えるため、接種後の生活の不自由を軽減するために「利き腕ではないほう」に注射するのが“常識”になっている。
だが、あえて本誌40代記者は利き腕(右)への注射を希望した(この会場ではモデルナ製ワクチンを接種)。というのも、この3か月ほど肩関節周囲炎(いわゆる四十肩、五十肩と呼ばれる症状)に悩まされ、右腕は肩より高く上がらないからだ。食事やキーボード操作に支障はないものの、鞄や買い物袋、重い荷物などは左手でしか持ち上げられないような状態。さらに副反応の痛みで左腕も上がらなくなってしまったら、日常生活に支障が出かねないと不安になったからだ。
ブースに入って丸椅子に座り、2つ3つの簡単な質問を済ませると、医師は「では、注射しますので袖をまくってこちらに向けてください」と促す。記者がおもむろに右の袖をまくって丸椅子を左に回転させると、医師は少し驚いた表情でこう訊ねてきた。
「あれ、左利きなんですか?」
事情を説明したうえで「やっぱり利き腕じゃないほうが良いんですか?」と聞くと、こう説明してくれた。
「そういうことでしたら右に打ちましょう。どちらの腕に接種するかで効き目に違いはありませんから、ご希望のほうで構いません。(記者と)同じ状態だったら、私も右に打ってもらいますね。ただ、副反応の痛みと元々の肩痛が混ざってしまうので、いつ副反応が治まったか分かりにくくなってしまうことはご理解ください」