アサヒはなぜ高めの価格設定にしたのか
では、メーカー側の思惑や狙いはともかく、消費者にとって肝心な微アルビールの価格や味はどうなのか。
アサヒの「ビアリー」は通常のビールと同じ棚に並べられ、ビールとほぼ同じ価格で販売されている。
アサヒ側の説明は、一度本物のビールを作り、そこからアルコールを抜く、いわゆる“脱アルコール製法”を採用し、専用設備に5億円を投資するなどコストがかかっている点と、微アルといえどもアルコールを含むので未成年者が気軽に手に取らない点を鑑みて価格設定したという。
とはいえ、アルコール度数1%以下は清涼飲料区分なので、微アルビールはノンアルビール同様、酒税はかからない。にもかかわらず通常のビールと同じ価格帯という点に、消費者が「高い」と思いつつも納得して買うかどうかだ。
アサヒによると「ビアリー」の販売は好調に推移しているというが、ライバルメーカーの幹部は発売当初、「(「ビアリー」は)長引く緊急事態宣言で飲食店への納入に力を入れているようだ」と話していた。
筆者も1人の消費者という立場で言わせてもらうと、アサヒの言い分を割り引いても、通常のビールと第3のビールの中間、いわば発泡酒の価格帯ぐらいで出して欲しかったというのが正直なところだ。
ただ、「ビアリー」は9月に小瓶タイプや500ml缶も発売予定など、やはり飲食店向けも意識しているので、業務用、家庭用の二兎を追うとなると、発泡酒や第3のビールと違い、家庭用の価格設定が難しい面はあるかもしれない。
サッポロの新商品は「新鮮味」に欠ける?
対するサッポロが9月に投入する「ザ・ドラフティ」(アルコール度数0.7%)は当面、350ml缶のみの展開のようで、気になるお値段は「新ジャンル(=第3のビール)と同価格帯」(同社幹部)というから、アサヒの「ビアリー」に比べて価格競争力は強そうだ。
サッポロでは「ザ・ドラフティ」を「次の新ジャンルだ!」というキャッチコピーで売り出すという。その心意気は買いだが、少し気になったのは商品のネーミングや缶のパッケージデザイン。
サッポロは過去、発泡酒で「ドラフティ―」、第3のビールで「ドラフトワン」という商品を投入している。今回の「ザ・ドラフティ」が、消費者から懐かしい馴染みのある響きとポジティブに捉える人と、逆に既視感があって新鮮味に欠けるとネガティブに受け止める人の割合がどれくらいになるだろうか。
また缶デザインや配色も、暖色の同系カラーを多用しているせいか、少し地味に映る。これも1人の消費者としての意見にはなるが、パッと見で埋没しないよう、もう少し冒険しても良かったのではないかという印象だ。
一方、アサヒはこれまで、大黒柱の「スーパードライ」が黒、赤、シルバーの3色基調でどちらかといえば男性的なイメージが強かったが、「ビアリー」と「ビアリー香るクラフト」はそれぞれ黒と白を基調にゴールドを使ってホップの実や葉の模様をあしらい、女性への訴求も意識した柔らかいイメージがある。