実際、TBSの『ザ・ベストワン』、テレビ東京の『有吉の世界同時中継~今、そっちってどうなってますか?~』、フジテレビの『爆買いスター恩返し』は、長時間特番をレギュラー化しただけ。
日本テレビの『おしゃれクリップ』、テレビ朝日の『くりぃむナンタラ』は、シリーズのリニューアル。テレビ朝日の『電脳ワールドワイ動ショー』は、深夜番組のマイナーチェンジ。テレビ東京の『~夢のオーディションバラエティー~Dreamer Z』は、民放各局が乱発しているオーディション番組であり、同局としても『ASAYAN』の令和版。
さらに、日本テレビの『一撃解明バラエティ ひと目でわかる!!』は些細な疑問や気になるニュースを扱う雑学系の番組、テレビ朝日の『ウラ撮れちゃいました』は同局が長年手がけてきた社会科見学系の番組、TBSの『100%アピールちゃん』は人・場所・物にスポットをあてた番組で、いずれもNHKを含めた各局が2010年代から量産してきた情報バラエティ。新番組らしい「新しさ」を感じるものは1つもなかったのです。
今年のヒットは『オモウマい店』のみ
このほかにも今秋はフジテレビが『新しいカギ』、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』、『所JAPAN』(カンテレ)の放送時間帯を変えたものの、こちらも順調とは言えないスタートとなりました。民放各局は「前後の番組を踏まえて、継続視聴しやすい形にする」という改編をしがちですが、録画やネットでの視聴が普及し、「自分の意思で見るものを決めていく」という人が増えているだけに、思うようにいかないところがあるのです。
実は今秋だけでなく今年全体に目を向けても、新番組で上々の結果が出ているのは『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日本テレビ系)くらいでしょう。
同番組が称賛を集める主な理由は、「この番組でしか見られない」というオリジナリティと、「スタッフが足で稼いだ情報と、粘り強い取材で得た人間ドラマ」という地道な努力。YouTubeや動画配信サービスなどでコンテンツの絶対数が増えた今、選ばれて見てもらうためには、この2点が欠かせないのかもしれません。
民放各局は、広告収入につながりやすいコア層(主に10~40代)の視聴者を獲得するために、長寿番組を終わらせるなど番組を入れ替えています。しかし今のところ、それらの層に「魅力的な新番組」という印象を与えられていないため、近いうちにさまざまな番組でテコ入れ策が施されるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。