コロナ以降、死亡者数が増加傾向にある誤嚥性肺炎。マスク着用が日常化し、表情筋を使わなくなった結果、口まわりや喉の筋肉が衰えたことが原因になっていると見られている。まさに「喉の衰え」は健康長寿の大敵、誤嚥性肺炎を防ぐためにも日頃から喉を鍛えるトレーニングなどが必要だ。
趣味を通して喉を鍛える方法もある。声とめまいのクリニック二子玉川耳鼻咽喉科院長の許斐氏元医師が提唱するのは「カラオケ」だ。
「歌唱の際は高い音から低い音、柔らかい音や強い音まで様々な声を出すので、喉のいろいろな筋肉をバランス良く鍛えられます。歌うと肺も一緒に動くので、肺活量が増えて呼吸のトレーニングになることや、楽しく実践できてストレス解消にもなるという利点もあります。
実際、歌の趣味を継続している70代の方々と歌わない方々を比較すると、通常その年代だと1オクターブくらいしか出ない音域が2オクターブ以上出たりと、声帯の力が倍ぐらい違います」
喉を鍛えるために重要なのが、「曲選び」である。
「あまりテンポの速い曲だと呼吸が疲れてしまうので、ゆったりとした演歌やバラードのほうが適しています。演歌のように長く歌声を響かせる『ロングトーン』を使う曲は、歌う時に声帯を長時間締め付ける必要があるので、喉の筋肉を持続的に鍛えられます」(同前)
『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)の著者で、西山耳鼻咽喉科医院院長の西山耕一郎医師は、「高音と低音を含む曲」が効果てき面だと語る。
「喉ぼとけは、高い声を出すと上がり、低い声を出すと下がります。その上下運動をしっかりと行なうことによって効率良く喉を鍛えることができるため、高いパートと低いパート双方を含む曲が喉トレに適しています。
曲名を挙げるとしたら、井上陽水の『少年時代』や北島三郎の『まつり』あたりが鍛えるのに良いでしょう」
その一方で「こぶし」や「ビブラート」をきかせた歌い方は単なる歌唱テクニックであり、喉を鍛える効果はあまり期待できない。また、張り切り過ぎてマイクを離さず2~3時間続けて熱唱すると、喉を痛めるリスクがあるので注意が必要だ。
歌う場所はカラオケ店に限らず、蒸気で喉が潤った状態で歌う「風呂場カラオケ」も効果が期待できる。