それだけじゃない。
事務所の片付けをしながら予算委員会の答弁を聞いていたら、どっちが与党でどっちが野党なのかわからない。こんなこと、いままでなかった。顔を上げてテレビ画面を見たら、勢いよく岸田さんに迫っていたのは若い女性の自民党議員で、逆に総理が答えやすいようにやさしい質問をしている、ように聞こえたのが野党議員の方。
あらためてテレビ画面に釘付けになって岸田さんを見ていたら、なるほどね。「聞く力」がスローガンの人らしく、身を乗り出して、質問の一言一言にいちいちうなずいて聞いているんだわ。
これで野党の調子が狂っちゃうのかしら。それとも、それなりに耳を傾けてくれる総理に罵詈雑言を浴びせたら、「そこまで言わなくても!」と有権者から逆に反感を買うと思ってしまうのか。立憲民主党の党代表が泉健太さん(47才)に代わって、対立路線から対話路線に変更したこともあるかもしれないけど、野党の言葉がどんどんマイルドになって、お行儀がいい質疑が続くようになった。別の見方をすれば、「総理、総理、総理!」で一世を風靡した辻元清美さん(61才)のようなスターやヒールが出てこないのよ。長いこと、政治は“与野党の激しい攻防”あってのものと思い込んでいた私には、そのお行儀のよさがとても新鮮に見えたんだわ。
それだけじゃない。「あれ?」は、もっと身近なところでも起こっている。
私と同い年の男性(64才)は、「人生に終わりがあるということに気づいて愕然としている」と言うの。社会人になったばかりの御子息から、自分のエレキギターのコレクション部屋を指して、「コレ、最後はどうなるの?」と聞かれたのだそうな。
「最後って……そうか。最後があるのか……。そうだよね。オレはずっと生きていると思い込んでいたけど、限りがあるんだよね。それに気づいたら、かなり慌てた」と言うの。
ちなみに私の「あれ?」は、東京だね。
東京から4か月離れて、久しぶりに東京のマンションに戻ってきたら、どこかよそよそしいのよ。ここに4年間も住んでいたのに、この部屋でこれからひとりでどう生きていくか、部屋の真ん中で呆然としちゃった。
いずれにしても、今年もまた、多くの「あれ?」に出会い、それぞれにびっくりしたり、呆れたり、笑ったり、怒ったりするのよね。ま、まだ「最後」を考えるには早すぎると思うけど、考え始めるにはいい年頃なのかも。間際になって「あれ?」と慌てないためにも。
※女性セブン2022年1月20・27日号