──茂木さんは、「脳にとっていちばん大切なのは、子どもが夢中になれるものを見つけて、“この世界にいていいんだ”という自己肯定感を持つことだ」とも語っていました。
西郷:いまの子どもたちは、自己肯定感が低いので、失敗を極端に恐れています。普段から「こうしなさい!」と指示されているから、「自由にしていいよ」と言われると困ってしまう。
オオタ:子どもをがんじがらめにして、自由を奪っているのはおとなです。今回の映画を見ていただくと、子どもとの距離感がきっと変わります。親は上から子どもに接してしまいがちですが、それは子どもを抑えつけているのと同じ。子どもたち誰もが持っている「宝物」を封じ込めていたわけです。
西郷:この映画に登場した学校がそれを証明していますが、夢のような環境に子どもをおくと、それだけでスイッチが入り、子どもの能力は勝手に開花していきます。あれこれしようとせず、親は子どもを見守るだけで、何もしなくていいんです。
オオタ:西郷先生は「学校を夢の中にいるような空間にしたい」とおっしゃったでしょ? まさしくそれだと思うんです。偶然ですが、映画のタイトルと重なってうれしくなりました。
学校も家庭も、子どもを矯正する場所じゃない。あなたの町の小中学校も、そしてあなたの家庭も、「夢みる場所」にできる。そのことにぜひ気づいてほしいと思います。
* * *
あなたのまわりに子どもがいるのなら、その子がやりたいことをどうか応援してほしい。それだけで、「子どもが夢みる空間」は実現できるのだから。
ドキュメンタリー映画『夢みる小学校』は2月4日よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺(ともに東京)ほかで上映予定。
【プロフィール】
西郷孝彦(さいごう・たかひこ)/1954年生まれ。養護学校(現・特別支援学校)をはじめ、理科の教員、副校長を歴任。2010年から2020年3月まで世田谷区立桜丘中学校長を務め、インクルーシブ教育を中心に据え、校則や定期テスト等の廃止、ICTの活用等を実践。現在は講演活動等で日本中を飛び回る。
オオタヴィン/1960年生まれ。大手広告会社を退職後、個人スタジオ「まほろばスタジオ」を主宰。映画の企画から構成、監督、撮影、編集ほかすべてをひとりで手がける。大病をきっかけに医食同源生活を実践、その体験をいかして映画『いただきます』(1、2)を制作。2月1日には新著『子どもはミライだ! 子どもが輝く発酵の世界』(木楽舎)を発売予定。
撮影/浅野剛
※女性セブン2022年2月10日号