長引くコロナ禍によってマスクやリモート通話が目新しくなくなったということも、こうした視聴者の心境の変化に影響していることだろう。とはいえ、今後は“コロナ表現”が一切なくなるとは限らない。飲用てれび氏はドラマの“コロナ表現”の可能性についてこう語る。
「テレビドラマにおけるマスクの描写でいうと、やはり『俺の家の話』が秀逸でした。マスクの付け外しで人間関係の距離感を表現するなど、物語にうまく組み込まれていました。
また、『孤独のグルメSeason9』や『サ道2021』(ともにテレビ東京系)も印象的です。どちらもシリーズものですが、前シーズンまでとは打って変わった世界で、主人公たちが当たり前のように感染対策を守りながら、グルメやサウナといった従来からの趣味を引き続き楽しむ。そんな姿が淡々と描かれていました。先述の2つの分類の間を行くような『現実を反映しつつ、現実を束の間忘れさせてくれるドラマ』だったように思います。
コロナ禍での楽しみを淡々と描く作品は、趣味系ドラマを中心に今後も放送されるかもしれません」
多くのドラマが「現実から離れたドラマ」を描くようになった今、“コロナ表現”を巧みに取り入れた「現実を反映しつつ、現実を束の間忘れさせてくれるドラマ」の価値は高まっていくとも言えるのではないだろうか。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)