数多くの病原体のなかで、矢野医師が特に危険視するのが「サイトメガロウイルス(CMV)」だ。
「ヘルペスウイルスの仲間であるサイトメガロウイルスは、子供の頃に感染しておけば無症状もしくは鼻風邪程度で済みます。しかし、大きくなってから感染すると様々な大病を発症することがあります。
特に深刻なのが妊娠中の女性が感染したケースで、お腹の赤ちゃんが『先天性サイトメガロウイルス感染症』という病気を持って生まれる可能性がある。その場合、生まれつき目や耳に障害があったり、小頭症という頭が小さな状態で生まれたりすることがあります。
同じような症状は、妊娠初期の女性が罹患することで起きる『先天性風疹症候群』でも現われますが、先天性サイトメガロウイルス感染症はその数千倍も発症リスクがあると言われている。また、風疹のようなワクチンがないことも要注意です」
20年ほど前には妊婦の90%がサイトメガロウイルスの抗体を持っていたが、日本が清潔な生活環境になると抗体保持者は減っていった。
実際、国立感染症研究所感染症情報センターでも抗体保持者の減少について、
〈乳幼児期に初感染を受けずに成人となり、伝染性単核症や妊娠中の感染により、先天性CMV感染症患児を出産する頻度が増加することにつながる〉
と警鐘を鳴らしている。