“持てる者”と“持たざる者”の格差が広がる
資産バブルとは、文字どおり資産――株や不動産などの実物資産から、仮想通貨などの新しい資産に至るまで――の価値が跳ね上がることだ。バブルというと、30年前のバブル景気のイメージから、好景気が連想されるかもしれない。通常、好景気になると消費や投資が伸び、企業の業績が上がって、給与所得者の給与が増加。そこからさらに消費が伸び、企業による投資なども伸びて、GDP(国内総生産)が上昇。その影響で、株価や不動産価格がますます伸びていく――といった好循環が作られる。
しかし、長嶋さんは「今後の資産バブルの局面においては、恐らくそのような状況にはならないでしょう」と話す。
「1980年代半ば~1990年代初頭のバブル景気のときは、1985年のプラザ合意で為替が一気に円高・ドル安方向に進んだことを背景に、大規模な財政出動と金融緩和が実施されました。その結果が、未曽有のバブル景気だったわけですが、これは現在のコロナ・ショック⇒大規模な財政出動・金融緩和、という流れとよく似ています。いつの時代も、バブル発生の要因は“金余り”にあり、すでに資産バブル発生の土壌は整っています。ただ、今回あり余るマネーが流れ込む先は“資産”であり、給与所得者の給与が上がって、多くの人が景気回復実感を持つようになるとは考えにくい。資産価格が上昇⇒その含み益や売却益がさらなる投資を呼び、あらゆる資産の膨張が消費や投資に波及する、という流れになるはずです」
給与が上がらず、資産価格だけが上昇するということは、そういった資産を保有している層――主には富裕層や資産家層、高額所得者層だけが、恩恵を受ける形になるということだ。長嶋さんの著書のタイトルにあるように「日経平均株価が4万円を突破」と聞くと景気がいい話に聞こえるが、つまるところ資産バブルがもたらすのは“持てる者”と“持たざる者”の格差の拡大と言えるだろう。
「実際、給与はこの30年で頭打ちどころかマイナスになっている感があります。それでも、資産価格は上がっていく。『株価は景気の先行指標』と言われますが、この定義は今の日本に当てはまらないのです」