作り手みんなが呑兵衛な現場
──武田さんは7年にわたってワカコ役を演じています。同世代を見渡すと、ひとつの役をこれだけ長く演じるのは珍しいことですね。
武田:役と自分がリンクする瞬間が多くなってきたのは感じます。『ワカコ酒』はモノローグは後からスタジオで別に録音して、現場では声を出さずに演技をするんですが、実際に料理を食べてみて、思わず台本とは少し違うリアクションになることもあります。そういうときは私が「ワカコは今こう感じたんじゃないか」と監督に伝えて、台本のモノローグが少し変わることもあります。
スタッフの皆さんが信頼してくれるので、私も安心して「ワカコだったらこうすると思う」と意見を言うことができます。でも自分だけがワカコとリンクしていると言いたいわけではなくて、全員でワカコ目線を共有できている現場だと思います。みんなが同じ方向を向いているのを感じて、すごく心強いです。
──第1シーズンからスタッフの面々もほぼ共通らしいですね。
武田: なので年に1回の撮影が、親戚の集まりみたいな雰囲気があります(笑)。
──やっぱり『ワカコ酒』チームはみんなお酒好きですか?
武田:はい! 監督やプロデューサーが実際にお酒を飲んでモノローグを作っていますし、コロナ禍の前は撮影終わりにそのまま飲んだりすることもありました。作り手みんなが呑兵衛だからこそ『ワカコ酒』はこれだけ続くドラマになったんだと思います。
──武田さんといえば、10歳から空手を続けてきて、黒帯を持っていることでも有名です。これまで世間で「空手の子」というイメージだったのが、今は「お酒」というイメージも強くなって……。
武田:「CMで瓦割りしていた子って、『ワカコ酒』の女優さんなんだ」と言われることもあって、お酒と空手、ふたつの全然違うところから私を知っていただける状況がおもしろいなと感じています。
コロナ禍にかけられた温かな声
──コロナ禍によって飲食店を取り巻く状況は大きく変わりました。撮影現場で「この状況下で『ワカコ酒』の意義とは何か?」のような会話はありましたか?
武田:「お店で飲めることのありがたみや、普通の日常の特別さを伝えられたらいいね」という話をしました。とはいっても『ワカコ酒』という作品を大幅に変えるわけではなく、これまでと同じく「小さな幸せはたくさん転がっている」ということを描いていこう、と。