被害者はシングルマザーや独身者など、いわゆる「おひとりさま」だけに限らない。関東地方在住の宮本香奈さん(30代・仮名)は現在、夫と保育園児の息子と暮らしている。夫とは子育てをめぐって数年前から不仲になった。昨年秋、インスタグラムを介して、「米国育ち」のイケメンと知り合った。
翻訳アプリを使ってやり取りをするうちに甘言に乗せられ、「日本に住むきみへのプレゼント搬送料」などと次から次へと送金を促され、総額360万円を騙し取られた。このうち100万円は母に負担してもらうほど、相手にぞっこんだった。
「電話も頻繁に掛かってきました。『息子は元気か?』などと気に掛けてくれたので、信用してしまいました。夫との関係も終わらせる覚悟でした」(香奈さん)
我に返ったのは、相手からの連絡が途絶えたときだった。
「犯人を許せません。母も私を止められずに後悔していました。警察に相談したけど、相手が外国に住んでいることもあり、なかなか動いてくれません」(香奈さん)
コロナ禍で横行する国際ロマンス詐欺——被害者は大金を騙し取られたまま、泣き寝入りするしかないのか。投資詐欺に詳しい正木健司弁護士はこう言う。
「銀行口座に振り込まれた場合は口座凍結による現金回収が可能ですが、仮想通貨への投資詐欺については犯人の特定が難しく、回収は困難です。
重要なのは、“詐欺の可能性”に気づけるかどうか。素性がはっきりせず、会ったこともない相手に儲け話を持ち掛けられても、安易に信用してはいけません。短期間で大きな利益が出る、そんなおいしい話はないですから」
投資詐欺に取り組む一部の弁護士は現在、犯人の特定に向け、加害者情報の迅速な開示をマッチングアプリの運営会社に求めている。
※女性セブン2022年3月24日号