「いやーあの番組は視聴率も良かった。検証内容も正論ちゃ正論ですけど、もっと好評価されてもいいと思いますよ」
そう語るのは、毎日放送のさる局員だ。“あの番組”とは、元日に放送された特番『東野&吉田のほっとけない人』のこと。同番組は日本維新の会の吉村洋文・大阪府知事、松井一郎・大阪市長、同党創設者の橋下徹・元大阪市長の3人が揃ってゲスト出演したことが政治的中立性の観点から問題視され、社内で調査が行なわれていた。
3月11日には、毎日放送番組審議会のホームページに〈今回「番組編集の自由」を裏打ちする番組内容の多角的な精査や組織的な検討が圧倒的に不足していたことは、組織の課題として率直に反省するものである〉などとする調査報告概要が公表された。
毎日放送は「調査結果や番組審議会の意見については、必ずしっかり読むよう全社員に伝えました」(広報部)とのことだが、当の局員たちは冒頭の通り「まずかったとの空気はそこまでない」(前出・毎日放送局員)という。
番組作りに対してこうした緩慢な雰囲気が漂うのは、毎日放送ならではの事情が関係してそうだ。別の毎日放送局員が語る。
「今回問題となった番組を制作したのは、『制作スポーツ局』で、元々バラエティを作っていた部署とスポーツ局が一緒になった部署です。松井さんと吉村さんの出演交渉は報道情報局が担当した。
近年、毎日放送はこのようにどんどん部署同士の垣根がなくなってきており、渾然一体と制作が進むなかで、中立性や公平性の認識が年々希薄になっているように感じる」
元毎日放送局員で同志社女子大学教授の影山貴彦氏はこう指摘する。
「毎日放送に限らず、在阪民放ではニュースとバラエティをごちゃまぜにした番組作りが常態化しています。そのほうが数字が取れるからです。境目を曖昧にした結果、ジャーナリズムの視点が抜け落ちているケースが散見される。全ての局員は中立性を意識した上でニュースなのかバラエティなのか、視聴者にも分かるよう区別した番組作りを心がけるべきです」
毎日放送は今後の番組作りについて、「放送の目標と倫理を明確にし、地域社会の期待と信頼にこたえる番組制作に努めます」(広報部)と回答。
その言葉が誠か、視聴者は見ている。
※週刊ポスト2022年4月1日号